魔法少女として戦う令嬢は婚約破棄されても戦い続ける! ……からのハッピーエンド。
「これで……終わりッ!!」
魔力で編んだ槍で目の前の黒いものを貫く。
一瞬すべてが停止し。
黒い敵は一気に飛び散り消滅した。
ふわりと地面に降り立つ。
「ふぅー」
そう、私は魔法少女と呼ばれる仕事をしている。
私が魔法少女になったのは今から五年前。
ある夜、空から星が降ってきて、気づけば魔法少女となっていた。
魔法少女は少女でありながら敵と戦わなくてはならない。
一応そこそこ強力な魔法は使えるようになるけれど、それでも戦いなんて不安で。
最初のうちは眠れなかった。
でも今ではすっかり慣れて、ベテランの域にまで達している。
「さ、帰ろっと」
明日は婚約者から呼び出されている。
朝早く起きなくてはならない。
だから早く敵を倒して帰って寝なくてはならない。
◆
翌日、私はいつもより早く起きて、婚約者であるオーボーンの家へ向かった。
「君との婚約は破棄とすることにした」
オーボーンはいきなりそんなことを言ってきた。
「え……な、なぜ……?」
「君は魔法少女とかいうことをしているそうだね」
「は、はい」
「戦いを生業とするような女を我が家に入れることはできない」
オーボーンの瞳は冷たく光っていた。
「僕の妻はお淑やかで何があっても従ってくれる女性でなくてはね。魔法少女なんてしているような野蛮な女性だといざという時に何をするか分からないから、僕の妻には無理だよ」
目を、顔を、見れば分かる。
彼は明らかに私を切り落としたそうだった。
こちらに共に生きる意思があるかどうかなんて、彼からすればどうでもいいことなのだろう。
「ではね。さようなら」
この日、オーボーンとの関係は終わりを迎えた。
なぜ?
ただ魔法少女として戦っているだけで切り捨てられなくてはならないの?
疑問符で満たされる脳内。
でも言い返すことなどできなくて。
結局私は何もできなかった。
あのまま終わってしまったことは悔しい。
けれども過ぎたこと。
今さら何を言っても無駄だ。
「……頑張ろう」
私は戦いに生きる決意を固めた。
それからは毎日のように敵と戦った。
私が魔法少女であることを知っている魔法少女仲間は「大丈夫? 無理してない?」と心配してくれたけれど、何もやけくそになっていたわけではない。
ただ、この時は動いていたかったのだ。
◆
戦いに没頭するようになって数ヵ月が経ったある日、私は、敵に襲われていた一人の青年を救った。
「この前はありがとうございました」
「いえ……あれは魔法少女の仕事ですので」
「感銘を受けました」
「私はべつに……そう言っていただくような人間ではありません」
「そんなこと言わないでください!」
その青年は、この国の有力者の息子だった。
「あ、そうだ、この後お茶でもしませんか?」
◆
結果から言うと、私はあの青年と結ばれた。
出会いから一年くらいが経った頃、彼からプロポーズされた。
私はそれを受け入れた。
頷いた時、彼はとても喜んでくれた。
それがとても嬉しかった。
私はもう魔法少女は辞めたけれど、今は彼と幸せに暮らしている。
ちなみにオーボーンはというと、魔法少女が倒していた黒い敵に襲われ身体を乗っ取られて暴れていたところを私ではない魔法少女に退治されたそうだ。
本来中身だけを倒すのが通例なのだが、その魔法少女は豪快な人だったようで、身体ごと消し飛ばしてしまったようだ。
◆終わり◆