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婚約者が私の幼馴染みと進展しておりまして。~邪魔者になりそうな私は去った方が良いですよね、どうかお幸せに~

 数ヶ月前、親同士が知り合いで学園時代の同学年であった青年ポーマーと、私は婚約した。


 幼い頃から幸せな結婚を夢みていた私は嬉しかった。

 彼と生きられる、そう思うだけで自然に笑みがこぼれた。


 けれど、それから一年も経っていないというのに、私は知ってしまう。


 私の幼馴染みリリネとポーマーが恋仲に近い関係に発展していることを。


「ここでいいか……?」

「ええ、いいわ。でも少し悪い気もするわね……あの子、婚約、すっごく喜んでいたから」


 その日、私は見てしまった。

 ポーマーとリリネが誰もいない客室でソファに寝そべるようにしていちゃついているところを。


「あんな娘はどうでもいい、それより君を……」

「あは、そうね」

「もっとこっちに寄って」

「ま、あの子、夢みてるだけの地味女だしね」


 リリネは私の一番の友人だった。親友とも言えるだろう。彼女はいつも私の横にいてくれたし、学園時代も良き友でいてくれた。私の婚約が決まった時も、誰よりも喜んで、お祝いしてくれたのだ。


 でも裏切った。


 彼女は私を純粋に祝福してくれたのではなかったのだろうか?


 あぁ、なんて悲しいこと。

 誰よりも信じていた友人に裏切られるなんて、悲しいとしか言い様がない。


「……あの」


 私の足は自然に動いた。

 運命に導かれるかのように、私は、二人がいる部屋の扉を開けていた。


 鍵くらいかけておけばいいのに。


「これは一体、どういうこと……でしょうか」


 青ざめる二人。

 一応悪気がないわけではないみたいだ。


 やらかしている自覚はあるのだろう。


「ち、違う! 君は誤解しているよ! これは、その、ちょっとした戯れさ!」

「そうよ! あたしたち、そういう関係なんかじゃ……」


 ポーマーとリリネはそれぞれ慌てていた。


「あの、私、お二人の関係を邪魔しようとは思いません。なので……」


 ポーマーは一瞬安堵の色を浮かべたけれど。


「婚約は破棄します」


 そう告げると、後ろ向きに倒れて失神した。


 婚約破棄と言われたくらいで気を失うなんて、正直、驚きというか何というか。呆れてしまう。危険な橋を渡り損ねることでそれほどの衝撃を受けるのなら最初から余計なことなんてしなければ良いのに。そうすればこういうことに発展することだってないのに。


「リリネ、貴女が裏切っていたなんて驚いたわ」

「違う……違うんだよ、これは……」


 泣きそうなふりをしても無駄だ。


「何も違わないわ。夢みてるだけの地味女なんでしょ? 私。ちゃんと聞いていたわよ」

「え……どう、して……」

「私、耳はいいの。そんな人だとは思わなかった……じゃ、さようなら」


 すべて終わってしまった。

 この手で終わらせてしまった。


 でも、後悔はない。


 とはいえ、手続きはまだ完了していない。

 これから色々ややこしくなりそうだ。

 一人で動き過ぎると危ないので、取り敢えず親に相談してみよう。



 ◆



 その後、私は、今回の件について親に話した。

 婚約破棄を告げたことも。

 で、親は協力してくれることとなった。


 そこからは、話し合いやら何やらで忙しくなる。


 色々大変だったけれど、親が協力してくれたこともあって婚約破棄の話は順調に進み、一年もかからず無事ポーマーとの婚約を破棄することができた。


 ポーマーの親は「息子が失礼なことをしてすみません」と謝ってくれた。

 少し申し訳なく思ったけれど。

 でも、こちらを責めるようなことは言ってこなかったので、その点に関しては嬉しかった。


 婚約者と一番近い友人を同時に失った私だが、前を向くことはできる。


 これからまた未来について考えようと思う。



 ◆



 ポーマーとの婚約が破棄となって数年が経った頃、父親についていく形で参加した晩餐会にて、一人の青年と知り合う。


 彼の名はルルトス。

 黒髪黒目の凛々しい雰囲気の人物だ。


 私は彼に惚れた。


 逆に、彼も私を気にしてくれていた。


 その日から私の人生は色づいて。

 見るものすべてに鮮やかな色が宿ったような気がした。


 で、数年の交際の後、結婚した。


 結婚から一年以上が経過した今も、ルルトスとの関係は良好。

 一つの屋根の下、共に暮らせている。

 彼は昼間は仕事で家にいないけれど、帰ってきた彼から仕事や仕事仲間の話を聞くのがとても楽しい。


 いや、正直、きちんと家に帰ってきてくれるだけでも嬉しく思う。


 ところで、最近親からポーマーらのその後について聞く機会があったのだが、彼はリリネとの結婚を望むも親に反対されたそうだ。

 親から「婚約者がいる男に手を出すような女性を家に入れることはできない」と言われたポーマーは家出。

 リリネの家へ行って、流れのままに同居を開始する。


 だが。


 ある日のこと、二人で森の中を散歩している時に賊に襲われてしまい、二人同時に拘束されて。賊がたむろする小屋へ連れていかれてしまったそうだ。で、リリネは賊たちの玩具にされ、ポーマーは愛する人を玩具にされた絶望の中死んでいったらしい。



◆終わり◆

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