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お絵描き大好き令嬢は婚約破棄される! ~お絵描きによって損も得もする人生です~

 私は絵を描くことが好き。


 家庭環境というわけでもないのだけれど、気づけば絵を描くようになっていた。


 最初は目の前にあるちょっとした紙に何かを描く程度で。

 でもいつしか段々規模が大きくなっていって、壁にまで絵を描くようになった。


 もちろん、壁に描いたのは頼まれたからで、迷惑行為ではない。


 白いキャンバスにこの手で世界を生み出す作業、これが好きなのだ。


 私は人間で、世界を生み出すなんてことはできず、けれども目の前の白の上になら望むものを何でも生み出してゆくことができる。


 まるで神様にでもなったかのようではないか。


 白の上では私は神様。

 自由に心行くままに世界を創造する。

 望むもの、美しいもの、何でも自由自在。その時私は全知全能の神となり、心の動きに従い、無限の世界を広げてゆくのだ。


 これだから、お絵描きはやめられない。


 でも……。


「お絵描き好きの女とか妻にしたら笑われるわ。お前の嫁アホか、て言われるわ。だから、婚約は破棄な」


 婚約者ルートヴィは私の趣味を受け入れられなかったようで、そう告げられてしまった。


 彼の前では普通に振る舞っていた。

 迷惑はかけていないはずなのだが。


「じゃあな、らくがきアホ女」


 彼の別れの言葉は暴言だった。



 ◆



 婚約破棄されてからはまた以前のようにお絵描きに熱中する暮らしに戻った。


 そんなある日、お絵描き仲間の知人に誘われたこともあって、絵画を飾る会に参加することになった。私はお気に入りの作品を二三点用意し会場へ運ぶ。そして展示する。


 それが運命を変えた。


 その絵画展をたまたま訪れた他国の王子が私が描いた春の絵に惚れ、それをきっかけに王子と知り合うことになったのだ。


 そこからまた色々あったのだが、数年後、私は彼と結婚することになった。


 意外な展開過ぎる。

 自分でもそう思う。


 けれど、これもまた現実なのだ。


 そうして生まれた国からは離れることとなってしまった私だけれど、親との連絡は今も取り合っている。


 その手紙の中で知ったことなのだけれど。

 ルートヴィは、ミンチを製造する工場に視察に行っている時に機械に巻き込まれてしまい、その場で亡くなったそうだ。


 とても恐ろしい話だとは思う。


 けれどももはや私には関係ない。


 私はここで王子の妻として働く。

 そしてお絵描きもする。


 この暮らしは、私にとっては、最高のものだ。


 まるで夢でもみているかのよう。



◆終わり◆

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