私が婚約破棄されたことで世界が平和になったようです。ある意味良かったです。
ここのところ、不幸なことが続いている。
世界に黒い感情が渦巻いているのだ。
憎しみや恨みは数多積み重なり、争いが生まれ、世界に平和などという文字はなく。
世界中を覆い尽くすほどではないが何かと物騒な時代。
そんな春のある日。
私は婚約者ポッタスムルスの家を訪ねていた。
「あのさぁ~」
「なに?」
「婚約、破棄することにしたんだよね」
私は言葉を失う。
「え……」
後頭部を殴られたような衝撃が駆け抜ける。
思考が停止してしまう。
相応しい言葉を見つけることができない。
「そういうことだからぁ~」
「本気?」
「嘘とか言わないよぉ~、さ、す、が、に」
とても信じられなかったが……どうやら冗談ではなさそうだ。
「てことで、君との婚約は破棄な!」
ポッタスムルスが関係の終わりを告げる。
瞬間、私の左胸から白い光が放たれた。
「え……? こ、これ……何これ……」
「何だぁ~?」
「よく分からないわ……」
なにがなんだか。
「ま、とにかく、私はこれで去るわね。……さようなら、ポッタスムルス」
婚約破棄された私は実家へ帰った。
そしてとある事実を知ることとなる。
「聞いた!? 戦争が次々終わっていっているんですって!!」
実家へ帰るや否や、母親が教えてくれた。
意味が分からない……。
戦いが、争いが、急に終わるなんて……。
「親戚のおじさんも帰ってくるかもしれないわ!」
「確かにそうね」
「やったわね! ……あ、でも、婚約破棄されたのは残念よね。ごめん、不謹慎だったわ」
いや、べつにいい。
婚約破棄は悲しいことだが、世界平和のほうが大切だ。
「ううん、いいの、気にしないで」
平和な世界が一番良い。
「さ、ティータイムしましょ!」
「ありがとう、ママ」
こうして平和が訪れた。
だがポッタスムルス一人だけは例外だったようで。
彼はあの後自宅に隕石の欠片が降ってきたらしく、それに巻き込まれて亡くなったそうだ。
◆終わり◆