私一人だけ皆と違っていました。そしてそのせいで色々損をしてきました。……が! ある時一つの出会いがあり、そこからは良き道へ進めました!
私一人だけ、皆と違っていた。
髪の毛の色は雪のような白で瞳の色はガーネットのような赤――だからよくあれこれ言われていた。
周りは私を仲間に入れてはくれず。
むしろ冷ややかに突き放した。
――あなたはわたしたちとは違う、と。
そんな環境で育ったこともあって、私は、誰にも愛されなかった。皆と同じような容姿を持っている妹は親からも親戚からも周囲からも愛されていたのに。私だけ、ただ一人、まるで余所者であるかのように扱われていた。
自分たちと異なる要素を持つ者を良く思わない。それは人としてよくある感情なのかもしれない。でもだからといって受け入れられるわけではないし、同じ人間なのに、と思ってしまって。どうしても、酷いな、と感じてしまうのだ。
そんな風にして育ってきた、ある冬の日。
私の人生を一変させる出来事が起きる。
「隣国メルトフォルから来ました、王子のレガルテと申します。貴女のその容姿は、わが国で『救世主』と呼ばれる聖女から受け継がれたものと思われます。なので、よければ我が国へ来ていただきたいと考えているのです」
レガルテは私を必要としてくれた。
人生で初めて。
私という生き物を欲してくれる人に出会えて。
だから私はそれに応えようと思った。
「……はい、私、必要としていただけるのならどこへでも行きます」
「我が国へ来てくれますか」
「はい……! もちろん、喜んで……!」
ずっと居場所が欲しかった。
だから私はレガルテについてゆくことを選んだ。
たとえ嘘だったとしてもそれでもいい、そのくらいに思っていた。
「ありがとう、助かります。ではこれから準備を。数日後、また迎えに来ます」
「はい……!」
隣国メルトフォルの王子レガルテ、彼との出会いがすべてを変えた。
彼は私に行くべき道を与えてくれたのだ。
「お姉さまみたいなのが見初められるなんて……どーせ詐欺ですわよ!」
妹はそんなことを言っていたけれど、私がレガルテに国へ呼ばれていることに嫉妬しているようだった。
でももう気にしない。
嫉妬から生まれた悪口なんてどうでもいい。
「貴女も幸せになってね」
だからそれだけしか返さなかった。
妹は妹で幸せになればいい。
そして私は私で。
少しでも前を向ける道を、存在価値が高まる道を、歩んでゆきたい。
そうして私は生まれ育った国に別れを告げた。
◆
単身メルトフォルへ移り住んだ私はレガルテの婚約者となった。
異国からやって来た娘、最初はあれこれ言う人もいないことはなかった。でも真っ直ぐに生きていたら周囲が変わっていって。いつしか、受け入れてくれる人支えてくれる人が増えていっていた。味方は確実に増加していったのだ。
そして、レガルテは、いつも私を愛してくれた。
「我が国に来てくれてありがとう」
「いえ」
そんなやり取りはもう何回も繰り返した。
◆
あれから数年が経ったが、私は今もレガルテと共に夫婦として仲良く生活できている。
こちらでの生活にももうすっかり慣れて。
楽しい日々の中で生きられている。
この国のため、私は生きてゆきたい。
今は純粋にそう思っている。
この国は私を救ってくれた。
あの地獄から連れ出してくれた。
だからこそ感謝を。
そして、お返しをしたい。
特技なんて何もない私だけれど――国のために働きたい。
そうそう、そういえば。
妹はあの後領主の子息と婚約するもその自分勝手過ぎる行動のせいで相手に嫌われてしまったそうで婚約破棄されてしまったそうだ。
そして、その一件で生きることに疲れてしまい、何があっても自宅から出られないような状態になってしまったらしい。
まるで廃人のような。
何にもやる気が起きず何のために生きているのかすら分からないような状態らしくて。
もうずっと何にも手をつけていないそうだ。
きっともう過去の彼女は帰ってこないのだろう……。
◆終わり◆
こちらの作品集は、本日をもちまして一旦完結とさせていただきます。
しかし道は続きます。
次は年明け、3でお会いできることを楽しみにしております。
ありがとうございました!(o^∀^o)