女を作って婚約破棄するとか、何なんですかそれ! ~がっかりした後の良き再会は最高ですね~
今日、婚約者エデルリッツから婚約破棄を告げられてしまった。
朝、珍しく呼び出されたので徒歩で行ける距離にある彼の家へ行ったのだが、そこではエデルリッツが女連れで待っていて――何事かと思ったら、いきなり「もうお前とは終わりにする」と言われたうえ婚約破棄を宣言された。
何でも、連れていたその女を気に入っていたようで、彼女と結ばれる道を選びたくなったそうだ。
呆れてしまった。
だから私は婚約破棄を受け入れた。
これはもう何を言っても無駄だろうと思ったから。
もちろん、身勝手な理由なので償いの金はしっかり払ってもらうつもりだけれど。
そんな残念としか言いようのない気分で過ごしていた、昼下がり。
家のチャイムが鳴って出てみると。
「久しぶり!」
そこには懐かしい顔が立っていた。
昔とても仲良かった異性の幼馴染みであるフィフスだ。
「え……ふぃ、フィフス? ……よね?」
「うん!」
「えっ、どうして!? どうしてここに!?」
彼はかつて引っ越していってしまったのだ、どこか遠いところへ。
それからもうずっと会っていなかった。
なのにどうして?
なぜ今になってまた現れたの?
……すぐには理解できない。
「戻ってきたんだ」
「そ、そうなの? また珍しいわね……」
「会いたくて」
「へ?」
「会いたくてさ、君に。……恥ずかしいけど、ずっと」
エデルリッツに捨てられた直後だからだろうか、今はフィフスがとても魅力的な異性に見える。
……見慣れた幼馴染みのはずなのに。
今日の私はどうかしている。
雰囲気に流されて。
幼馴染みを魅力的だなんて思って。
「え? あの、よく分からないのだけれど……」
でも、また会えて嬉しい。
あの時は急に離れることになってしまったから。
「と、とにかく! これからまた仲良くしてほしいな! ってことだよ。……もしよければ、だけど」
「ええ! それはもちろんよ! あ、そうだ、ちょうどよかった聞いてほしい話があるのよ」
「話?」
「ええ、婚約者に一方的に切り捨てられた話よ」
「婚約者いたの!?」
「ええ、だけど、今朝捨てられたの。他の女ができたから婚約破棄ですって、酷いわよね」
こうして始まってゆくのだ、新しい物語が――。
ちなみにエデルリッツは、あの女性と共に我が家に多くの償いの金を払わされ、それによって女性の親から激怒されてしまったそうだ。で、女性とは別れなくてはならないこととなったそう。迷惑をかける男に娘を渡せない、と、女性の親から言われたのだそうだ。
そうして彼は結局何も手に入れられないまま終わったらしい。
ただ、女性も、その後幸せにはなれなかったようで。
エデルリッツと無理矢理離されたことで心を病み、以降、抜け殻のように生きることとなってしまったそうだ。
結果は私の一人勝ちである。
◆終わり◆