理解されず婚約破棄されましたが、その後、理解ある良き人と出会い結ばれました。
私は若くして剣士となり魔物との戦いに生きてきた。
でもそれでもいつかは結婚したり幸せになったりできると思っていた――でもそれはあまり考えだったのかもしれない。
親の紹介で縁を得た婚約者フルビレグリッツは、ある朝、突然家にやって来て告げてくる。
「婚約は破棄する」
――そんな言葉を。
「まぁ護衛くらいにはなるかと思って婚約したが、やはり、お前みたいな野蛮な女を妻にするのは嫌だという思いが強まってきた。よって、婚約は破棄とすることにした。やはり、妻にするのは、もっと美しく愛らしい淑女でなければ」
フルビレグリッツは悪気なんて欠片ほどもなさそうな顔で言った。
……私にだって心はあるのだが。
こういうことを言ったら相手が傷つくかもしれない、などということを考えてみたりはしないのだろうか?
人間誰しも心というものを持っている。心ない言葉をかけられれば傷つくものだ。大人ならそのくらい分かっているだろうに。にもかかわらず彼はなぜここまでさらりと軽い雰囲気で傷つけるような言葉を発せるのだろう。私からすれば謎でしかない。
「じゃあな、さよなら」
彼は最後、そう言って、私との関係を完全に終わらせた。
私を切り落としたのだ。
その日はとにかく悲しくて。
ひたすら剣の素振りをした。
◆
婚約破棄の数日後、フルビレグリッツが亡くなったという情報が入ってきた。
何でも、魔物に襲われて落命したらしい。
この国ではよくあることだ、魔物によって死ぬことになるというのは。
なんせ彼らは凶暴な存在。
種類にもよるが一般人が遭遇してしまうと危ない種類も存在する。
ただ、驚いたのが、女性と二人でいるところを殺されたという状況。
彼には既に他の女がいたようで、私がいる間から密かにその人と交際もしていたようだ。
まったく気づいていなかった……、まぁ私が彼の動きを気にしていなかったからかもしれないけれど。
◆
――あれから二年。
「今日出るの?」
「ええ、仕事よ」
私は結婚した。
ただ、環境が大きく変わった今でも、仕事は辞めていない。
「どこ?」
「北の洞窟、魔物狩り」
「うわぁ……」
「何よその顔、おかしなことでもあった?」
夫は元同業者。今はもう辞めて家事をしてくれている。けれど、元々そういった仕事に馴染んでいたから、私の仕事にも理解を示してくれている。心配しながらも、日々応援してくれているのだ。
「いや、ううん。ただ怖いなぁって。あの洞窟で怪我したことあってさ、それから、ぼくずっと怖いんだよね」
夫は唯一無二のありがたき理解者である。
「へえ、そうだったの」
「引退したんだよ、その怪我が原因で」
「そう……」
「気をつけてね、きっと帰ってきてね」
「もちろんよ!」
私は今日も剣を振る。
そして仕事をこなし稼ぐ。
愛する人、何よりも愛おしい夫のために。
◆終わり◆