仕事に生きてきた私はそのせいもあって婚約者を失いましたが、働き続けて幸せになれました!
仕事に生きてきた私は今日、婚約者を失った。
「あんたみたいな仕事人間、悪いけど無理なんだわ。可愛げねえしよ。だから、さ。婚約は破棄ってコトで! いいだろ? べつに俺なんかいなくてもどうでもいいもんな! じゃ、さよなら!」
婚約者ベフィトネッツは一緒に過ごしていたらいきなりそんなことを言ってきて、それによって関係は解消となってしまったのだ。
いろんな意味で悲しい……。
確かに私は仕事に熱心に取り組んできた。
でも彼は放置していたわけではない。
時折会っていたし遊んだりもしていたし、良い関係であれるよう努力し続けてきていた。
でもこうなってしまって。
あまりにも悲しいことだ。
だが! いつまでも泣いているわけにはいかない!
だって私には仕事がある。人生を構成するものは婚約だけではない。特に私のような人間においては。私の人生には、婚約うんぬん以外のものだってあるのだ。
だから折れていられない。
たとえ辛いことがあっても、己の道だけは守らなくてはならない。
落ち込んでいる暇などないッ!! ……というやつだ。
ベフィトネッツとの関係は終わってしまった。でもそれはもはやどうしようもないこと。だから目は未来へ向けて。幸福な未来のため、今できることをやっていこうと考えて。より一層仕事に打ち込むことにした。
その結果、仕事のほうで大成功し、大金持ちになることができた。
「女性なのにすごいなぁ」
「尊敬しますよー!」
「とっても熱心だし有能だし……尊敬しちゃうっ」
「夫になってほしいくらいですぅ~」
今の私は皆から頼られ尊敬されている。
多くの人に見つめていてもらえるというのは嬉しいことだ。
でも謙虚に。
能力があるなら特に丁寧に謙虚でなくては。
そんなある日、同僚から聞いた。
「そういえばぁ、ベフィトネッツさんって人、色恋沙汰に巻き込まれて死んでしまったそうですよぉ」
――驚きな、そんな話を。
「そ、そうなの!? どこ情報!?」
「へっへーん! 実はベフィトネッツさんの知り合いにわたしの知り合いがいるんですよー」
「そうだったの、知らなかったわ」
「えっへん!」
何でも、三股していてそれがばれてしまったようで。遊ばれていたことに気づいた女性たちにしばかれてしまって。それが段々エスカレートしていって、しまいにベフィトネッツは殺められてしまったようなのである。
「情報通でしょー!?」
「そう思うわ」
「ですよねですよね! やったぁーっ、そう思う、いっただきましたぁーッ!! えっへん!」
その後私は仕事でより多くの富を築き、職場にも富をもたらして、皆で幸せになれた。
私はそれから良い人と結婚もでき、穏やかな幸福を手に入れられた。
あの時ベフィトネッツにこだわらなくて良かった、と、心から思った。
未来なんて分からないものだ。
何かを失ってもそれによって何かを得ることもある。
◆終わり◆




