可愛く素敵な親友が婚約破棄されました!? なんてこと! 納得できません! ……でも取り敢えず幸せになってくれればそれでいいです。
「今度ね! お金持ちの子息と婚約することとなったの!」
親友ネイリがある日突然告げてきた。
「そうなの!?」
いきなり告げられて自分でも意外なくらい驚いた。
というのも、ネイリは男との関係をあまり持たない女性だったのだ。
美しい容姿でありながら異性にはあまり関心がなく、さらに、奥手なので余計に発展もしない――そういう人から婚約を聞かされたから、とにかく衝撃だった。
「ええ、そうなの~」
でも大好きな親友が幸せそうだと私も嬉しい。
「うっそ! 羨ましいーっ、でもやっぱり、そんな感じだろうと思ったよ! ネイリは可愛いからっ」
「ネイリ、嬉しそうね!」
「うん、本当はね、彼のこと……好きだったの」
「そっかぁ。ああ、でも、いいよね~そういうの。良かったね! きっと幸せになってね、ずっと応援してるよ!」
◆
数ヶ月後。
「婚約破棄された……」
「ええっ」
ネイリは婚約破棄されてしまったらしい。
「性格が可愛くない~って言われたの」
「何それ酷い!」
「まぁ確かに、ぶりっことかはしていなかったけど……」
「気にしちゃ駄目だよ! ネイリは最高! 可愛い!」
その婚約者は見る目がない。
心の底からそう思った。
だって、彼女は、ネイリは、とても素敵な女性なのに。
同性から見ても素晴らしい女性なのに、それを悪く言うなんて――損な人、とてもまともとは思えない。
好みという要素があるとしても、だ。
「きっと幸せになれるから! もっといい人に出会えるよ!」
ネイリは何も悪くない。
そう伝えたい。
とても素敵な女性なのだから自信を失わないでほしい。
「ありがとう……」
「何かあったら呼んでね、協力するから」
「う、うん! でも……もうしばらくは婚約とかはいいかな」
「……そっか」
「だから、また、こうして会ってくれる?」
「そんなくらいなら任せて! いつでも会えるよ!」
「ふふ、優しいね~」
「そ、そうかな!?」
◆
あの後、ネイリとの婚約を破棄した男性が、私に婚約希望の意思を伝えてきた。
もちろん断った。
彼が心ない人だと知っている。
だから騙されない。
関わっても不幸になりそうなので丁寧にお断りした。
それから少しして、彼は自殺したようだった。
でもべつに私のせいではない。
死を選ぶこと。
それもまた彼の選択だ。
ちなみにネイリはというと、隣国の第三王子に見初められてその人と結婚した。
今も幸せに生きているようだ。
たまに手紙をくれる。
そこにあるネイリの言葉たちは輝きに満ちている。
◆終わり◆