特殊スキル・幸運引き寄せを持った私を捨てて良いのですか? きっと色々上手くいかなくなりますよ? ~やはり彼は終わったようです~
特殊スキル・幸運引き寄せを持って生まれた私カエーラは、若くして事業を行っている青年ビットブレと婚約することとなった。
それが今から数ヶ月前の話だ。
知人を通して知り合った私たちだったけれど、気が合わないわけではなさそうだったので、きっとそこそこ上手くやっていけるだろうと思っていた――彼の行動を知る時までは。
――そう、ビットブレは他の女に手を出していた。
「婚約者さんいるのにいいの? あたしは会いたいけど……でも、悪いよね」
「いいんだ、あんなやつ」
「本当に?」
「ああ。だってあいつを選んだのはスキルだけ、好きだからじゃないからな。あいつは置き物として傍にいてくれればそれでいいんだよ」
「酷くなぁい……?」
「まったく、優しいなお前は」
「そんなことないよぉ」
その女とビットブレは彼の家に泊まって一晩仲良くするくらいの関係だった。
また、定期的に二人きりで会っていた。
最初は流していたけれど段々もやもやしてきて我慢ならなくなって。
「ビットブレさん、少し良いですか?」
「ああ、なんだ」
やがて私はそのことについて切り出してしまった。
人間誰しも我慢には限界があるものなのだ。
私は女性とのことについて意見を述べた。
するとビットブレは激怒。
急に顔色を変えて必死になって「そんなんじゃない」とか「勘違いするな」とか言い始める。
明らかにおかしい……。
だってそうだろう?
本当に違うのなら冷静にそう言えばいいだけ。
なぜ狼狽える?
なぜ必死になる?
「お前がそんな小さい女だとは思わなかった! もういい! 婚約なんぞ破棄だ!!」
しまいにそんなことを言い出すビットブレ。
「そうですか、分かりました。ではさようなら」
こうして婚約は破棄となった。
――が、幸運引き寄せスキルを持っていた私が離れたことで、ビットブレの事業の状況は一変する。
彼は事業において失敗を連発。
資金も尽きて。
もはや継続などできないという状況にまで追い込まれる。
で、そのことをあの女性に相談したようだが――意外と無能なのね冷めたわ、などと言われて捨てられてしまったようだ。
結局、女性は彼を真の意味で愛してはいなかったのだろう。
金がある。
地位がある。
高い能力がある。
――そういうものだけを見て愛されていたのだ、ビットブレは。
そこに温かな愛などなかった。
ちなみにあの女性もまたその後独占欲が異様に強い男に引っかかってしまって不幸な最期を迎えたみたいだ。
ま、それに関してはあくまで噂程度の話だけれど。
ちなみに私はというと、ビットブレと別れた後、風邪を引いた姉の代わりに国主催の茶会に参加した。そしてそこで王子に見初められ。いきなり声をかけられ、初対面ながら愛を囁かれ。そうして王子との関係が始まった。
で、やがて王子である彼と結ばれる。
「カエーラさん、これからよろしくお願いしますね」
「は、はい!」
「共に良き国を作ってゆきましょう」
「はい、よろしくお願いします」
特殊スキル・幸運引き寄せがあれば、この国の繁栄のために少しくらいは何かできるだろう――きっと。
彼と共に歩もう。
より良い未来のために。
◆終わり◆