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王子と婚約した妹は幼馴染みが婚約者な私を見下していましたが、幸せになれたのは私たちだけでした。

 私はそこそこ地位のある家に長女として生まれた。


 三つ年下の妹リアナよりはいまいち可愛がられず育ってきたけれど、でも、そこそこ良い環境で成長できたことには感謝している。


 そんな私には、婚約者がいる。

 幼馴染みである同じ年の青年リリマンガスだ。

 彼とは小さい頃からよく遊んでいた。


 そして、婚約者同士となった今も、彼とは仲良しなままでいられている。


「へぇ、そうなんだ! じゃあ妹さん、王子と婚約するんだね!」

「ええそうなの」

「嬉しい? 嬉しくない?」

「どうかしら……まぁ嬉しくないことはないけれど、ちょっと、いいなぁと思う部分はあるわね」


 そう、妹リアナはこの国の王子であるオポチュニと婚約した。


 王子と婚約、なんて、私には似合わない。そんなのは高望み過ぎる。だから、憧れのように少々羨ましく思うことはあっても、だからどうとは思わないし奪いたいとも思わない。


「でもリアナは可愛いから、当然の結果だと思うわ」

「そうか……」

「リリマンガス? どうしたの?」

「ああ、いや、その……僕みたいなのが相手でがっかりかな、って」


 リリマンガスは少し申し訳なさを抱いているようだった。


 でも! そんなことは絶対にない!


 私にはリリマンガスが合っている。

 昔からよく知っているし。

 長い時を経ても心も通じ合っているし。


「そんなことないわ! 私はリリマンガスがいいの!」

「本当……?」

「当たり前でしょう。私は貴方が一番好きだし貴方と一緒に生きていきたいの」

「そ、そう……嫌じゃない?」

「当たり前よ! 嫌だなんて、そんなの、あり得ないわ!」


 私とリリマンガスの信頼関係は誰にも崩せない。

 だからこそ、そんな特別な彼と歩みたい。

 リリマンガスがいてくれるなら、煌びやかさなんてなくていい。


「リリマンガス、ずっと一緒にいましょうね」

「うん!」


 その日、改めて誓い合った。


 それからというもの、私は、リアナから自慢されても何も思わなくなった。


「お姉さまは幼馴染み、わたくしは王子様! ま、妥当なところですわよね。だーって、お姉さまとわたくしでは、女性としての価値のレベルが違いますものねっ」


 何を言われても悔しくない。


 それに、そもそも結婚というのは競い合いではないのだから、そこには勝ちも負けもない。


「そうね、相応しいと思うわ」

「え?」


 自分が満足できればそれでいいのだ。


「私はリリマンガスを愛しているもの、私は彼と歩む。でも、リアナには、もっと煌びやかな世界が似合うわよね」


 ――リアナとオポチュニの結婚が数週間後に迫った、ある日。


「いやあああああ!!」


 突然リアナが叫びながら家へ帰ってきたと思ったら。


「婚約破棄されるなんてぇぇぇぇぇぇぇ!! いやあああああああああ!!」


 オポチュニから婚約破棄を言いわたされたようだった。


 聞いた話によれば、リアナが嘘の学歴を伝えていたそうで、そのことがばれたために「嘘つきはすべてにおいて信頼できないから」ということで婚約を破棄されたのだそうだ。


「どうしてえええええ! どうしてよおおおおお! こんなに可愛いわたくしを捨てるなんてぇぇぇぇぇ許せない許せない許せないわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 リアナはショックで正気を失っていた。


 その後入院した。


 以降、私はリアナと会うことはもうなかったが、彼女はいつも「姉にはめられた」とか「姉のせいよ、あんな貧乏神が家にいるから」とか私に責任を押し付けるようなことを言っていたそうだ。


 でももはや誰も真面目には聞かない。


 言っているだけ。

 誰もがそう思っている。


 だから私への影響は一切なかった。


「そっかぁ、妹さんのこと大変だったね」

「ええ……」

「でも、一緒に住まなくて良くなったのなら、まだ良かったかな?」

「そうよ。本当に助かったわ」


 そして私はリリマンガスと結ばれた。


 彼の両親と同居しているが、彼らからも大切にしてもらえて、今はとても幸せに暮らせている。


「同居、許してくれてありがとう」

「いえいえいいのよ。それより私の方こそいつもお世話になっていて……ご両親にも感謝しているわ」

「これからもよろしくね!」

「ええ! もちろん! こちらこそ!」



◆終わり◆

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