婚約破棄を告げられた直後、災難に見舞われ、彼は滅びました。
驚くようなこと。
それは一見作られるもののようで、現実にも時折ねじ込まれてくるものだ。
「ミルフィア、君との婚約は破棄とすることにした」
婚約者ボロテックから婚約破棄を宣言される。
これもまた一つの驚きだ。
「え……」
「ずっと考えていたんだ。ミルフィアと生きてゆくので本当に良いのだろうか、と」
「そうですか……」
直接言われると何とも言えない気分だ。
本当に良いのだろうか、とか。
そういうのは心の中に置いておいてほしかった、と思ってしまう部分は確かにある。
正直なのは悪いことではないけれど。
でもやはりそんな風に言われたら傷つく。
「で、考えに考え抜いた結果、やはりやめようと思ったんだ」
「やめようと……」
「いきなり伝える形になって悪いなとは思っているんだ。だが、やはり、自分の心に嘘はつけない。だから終わりにすることにした。そして、君よりもっと良い人、より良い相手を探すことにしたんだ。やはりどうしても思ってしまう、妥協したくない、と。だから……悪いな」
ボロテックはあまり罪悪感は抱いていないようだった。
表情も声もさらりとしている。
ただ、話が長い!
聞いていてもちっとも楽しくないし、憂鬱さが高まってゆくばかり。
複雑な心境だ。
そんなこと、直接本人に言わなくていいのに。
「では、さようなら」
彼がそう発した瞬間――突如部屋の窓が一斉に割れた。
甲高く刺々しい破裂音が鳴る。
「なっ……!?」
愕然とするボロテック。
次の瞬間、大地が揺れ始める。
私は思わず変な声を発してしまった。
それから座り込む。
揺れが酷くて立っていられない。
刹那、ボロテックに向かってシャンデリアが落ちてくる。
「あ」
私はそれだけしか声を出せなかった。
「うわあああ!」
彼は一瞬でシャンデリアの下敷きとなった。
大惨事だ。
いつも当たり前のように存在していたシャンデリア、特に何か考えてみたことはなかったけれど。でも、よくよく考えてみれば、かなり危ない物体だろう。あんな高い位置に大きな物がぶら下がっているなんて。
「ミルフィア……助けて……」
少しして揺れが収まったと思ったら、大量のカラスが室内に入ってきて。
「うわあ……ああぁぁ……ああ……ああぁぁぁぁぁぁ……」
ボロテックは複数のカラスに一斉に襲われていた。
その後私は救助隊によって救助してもらえたが、ボロテックはその時には既に息絶えていた。
こんなことになるなんて……。
驚きだ……。
ただ、幸い、私は怪我はなかった。
◆
その後私は良い人と巡り会えて結婚もできた。
ボロテックがいなくても幸せにはなれた。
あの時は傷つきもした。
けれど悲しみも越えて一歩ずつ未来へ歩んできて良かったと今は思える。
さぁ、未来へと進もう!
◆終わり◆