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普通の家庭に生まれた私は「もっと条件の良い女性を見つけた」とのことで婚約破棄されてしまいましたが、その直後に大金が舞い込んできました。

 私はこの国における中くらいの階級の家に生まれた。


 食べ物はしっかりあったし、物が買えず困るということも特にはなく、ただし日々贅沢をできるかというとそんなことはない。


 そのくらいの家庭で育った。


 そして、同じような階級の家の出である青年トゥベリンウと婚約したのだが……。


「婚約、破棄するからね!」

「はい?」

「あれー、聞こえなかったのかな? 婚約、破棄するーって、言ったんだよ?」


 トゥベリンウのことは嫌いではなかったが、いきなりこんなことを言われたことには不快感を覚えてしまった。それも、真剣な言い方ではなかったからなおさら。重要なことを遊び半分のようなニュアンスで告げられるというのはあまり嬉しいことではない。


「待って、いきなり過ぎない?」

「何それ鬱陶しー」

「どうして? 何か理由があるの?」


 尋ねると、彼は笑顔で返してくる。


「もっと条件の良い女性を見つけたんだよね! それが理由!」


 呆れてしまった。

 乗り換えだったなんて。


「そういうこと、か……」


 ついそんなことを言ってしまった。


「そ! だからさ、キミの存在価値はもうないんだ。はやーく、消えて? あっはは」


 彼は最後まで楽しげ。

 話している間、ずっと、笑顔を崩さなかった。


 トゥベリンウに婚約破棄された私は「親に言いづらいな」と思いつつも家へ帰る。


 母親が迎えてくれた。

 何も知らない母親、ご機嫌な顔だ。


 で、そろそろ婚約破棄されたことを伝えようと思っていたのだが、ちょうどそのタイミングで訪問者があって。


 言えなかった、と思っていると。


「聞いて! タカラクジ、一等当たったんですって!」


 母親が飛んできた。


「え」

「今の人、それを伝えに来たのよ!!」


 我が家は娯楽としてタカラクジなるものを購入している。それほどたくさん購入するわけではなく、遊び程度だが。ただ、一家でちょこちょこと購入して楽しんでいるのだ。もっとも、最初に買い出したのは父親なのだけれど。


「……うそ」

「本当よ!!」

「え、ちょ……どういう……」

「しかもあなたの名前で買ったやつよ!!」


 青ざめる。


「……本当、なの?」

「ええ!」


 こうして大金が舞い込んできた。



 ◆



 タカラクジなるもので大金を得ると、トゥベリンウはすぐに聞きつけてやって来た。


「やっぱりキミと結婚するよ!」

「はい?」

「それだけのお金があるならキミの方が条件が良いんだ!」


 馬鹿ですか? と問いたい気分だ。


「あの、意味が分かりません。もう他人ですよね。お断りします、さようなら」


 捨てたのは彼だ。

 そんなトゥベリンウと今さらもう一度関わる気はない。



 ◆



 その後私は裕福に過ごせるようになったのだが、一方トゥベリンウはというと結婚に失敗して借金返済を代わりにさせられることとなってしまったそうだ。


 妻となった人は一見お金を持っていそうな家の出だったのだが、実は親が裏でやらかしている人で、多額の借金があったそう。


 トゥベリンウは、その返済を押し付けられてしまったうえ、妻とは別居で無視されているらしい。



◆終わり◆

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