これからもずっと幸せでいましょうね――あの時の約束は簡単に破られてしまいました。なので彼との関係は終わらせます。
「これからもずっと幸せでいましょうね」
「ああ、そうだな」
「結婚しても、夫婦になって子どもができても、ずっとよ」
「当たり前だろう」
あれはいつのことだったか。
私は婚約者である彼モルベコテッテとそんな会話をしたことがあった。
あの頃は一緒に過ごすのが楽しくて。
二人でお茶を飲むだけでも嬉しい気持ちが大きかった。
「生涯を共にしよう。良い時も、悪い時も、ずっと隣にいような」
「ええ! 支え合いましょう」
きっと、彼もそう思っていたのだと思う――あの頃はまだ。
◆
「なーに照れてんだよ!」
「だってぇ、モルったらぁ大胆なんだものぉ。恥ずかしいわよぉ」
その日、私は目にしてしまった。
モルベコテッテが私の知らない女性と自室で薄着でいちゃついているところを。
二人は彼の部屋のベッドの上で身を絡め合って楽し気に甘い言葉を交わし合っている。
恋人同士であるかのように指を絡めて手を繋ぎ、互いの面を何よりも愛おしそうに見つめ合う――その様子は、完全に、恋人同士のそれである。
その様子を目撃してしまった私は、たまたま持っていた撮影魔法が組み込まれた小型カメラで二人の様子を撮影した。
そしてその場からは離れた。
その後親に相談し、父に頼んで婚約を破棄してもらった。
「あの男……! 勝手なことをやりおって、許さん……!」
父は婚約破棄できてもなお怒っていた。
いや、私だってそうだ。
許したわけではない。
本人らは見せる気はなかったとしても、あんなものを見せられたのだから、良い気分にはならない――婚約者だからなおさら。
ただ、執着するのも嫌だったので、離れたことを後悔はしていない。
◆
それから数週間が経った、ある日。
モルベコテッテとあの女性のその後についてちらりと聞く機会があった。
その話によれば。
モルベコテッテはあの後デートで山へ行ったそうなのだが、二人でのんびり散策していたところ山賊に襲われたそうだ。二人はもちろん逃げようとしたのだが、逃げ切ることができず、二人まとめて山賊に捕らわれてしまったらしい。
それからモルベコテッテは山賊らのおもちゃにされて。
やりたい放題拷問され続けたそう。
そして、やがて、力尽きて落命したらしい。
一方女性はというと、殺されることはなく、山賊らの奴隷として生涯を終えるまで拘束され続けることとなったようだ。
ま、自業自得だろう。
人を傷つけるような行為。
それへの天罰だ。
◆
あの婚約破棄から数年が経ち、私は今、領主の妻となっている。
毎日仕事はあって忙しい。
でも楽しさもある。
人々のために働ける嬉しさ、というものは、確かに存在している。
だから私は今日も働く。
愛する人と共に、愛する人を支えるため。
来る日も来る日も自分にできることをやっていく。
◆終わり◆