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私との婚約を破棄した彼は、その日の晩、一家まるごと謎の事件に巻き込まれました。~そして私は意外な道へ行くこととなりました~

 幼い頃から謎の言語を理解することができた。


 あれはまだ五歳くらいだった頃。

 庭に得体のしれない生き物が佇んでいるのを発見して。


「ポッ、ポオポッ、オポポポッ? (あの、ええと、ここはどこ?)」


 私はその言葉の意味を理解できたのだが、親や近所の人など周囲の人たちは理解できていないようだった。


 その時は私が通訳のように動いてその謎の生き物を山へ返すことができた。


 あれは不思議な出来事だった……。


 でもそれも遥か昔の出来事で。

 そんな不思議な経験をしたことのある私も、今や二十歳になり、皆と同じように婚約者がいる。


 だが何もかもが上手くいくわけではなくて。


「お前との婚約、破棄するわ」


 婚約者、彼の名はディッツ。


 彼は私のことを前々からあまり良く思っていないようだった。友人に私の悪口を言っているところを目撃したこともあったくらいで。だから愛されているなんて欠片ほども思ってはいなかった。


 だから婚約破棄を告げられてもそこまで驚きはしない。


「婚約破棄、ですか」

「ああそうだ。俺、お前とは上手くやっていける気がしねえ。だから早めに終わりにしようと思ってさ。いいだろ? お前だって、嫌われながら生きてゆく方が嫌だろ」

「それはそうですね」

「よし! 決まりだ! じゃ、そういうことで。さらば!」

「そうですか……分かりました」


 婚約という関係が解消された日の晩のことだ。

 ディッツが両親と共に暮らす家の前に一台の謎の宇宙船が停まって。

 翌朝、近所の人たちが気づいた時には、ディッツ家は母以外皆揃って亡くなっていたそうだ。


 ディッツの母だけは行方不明。

 それ以外の家族は亡骸で発見。


 ――恐ろしい事件だった。


 でも、それが何によって引き起こされた事件なのかはまったくもって分からず、人間が調査したところでその謎は解明されなかった。


 そして、ただの一つの未解決事件として、記憶の奥へ消えてゆく。


 そんなある日。


「ポッ、ポポッポロポ? (今、独り身?)」


 かつて目にした謎の生物がわが家へやって来た。


 虹色ののスライムを縦に豪快に伸ばしたような生き物だ。


「え、独り身、とは?」

「ポッポポ、オポポン? (結婚してない?)」


 あの時と同じだ。

 やはり、私だけがその言葉を理解できている。


「はい、していませんよ」

「ポッポポ、オッポロロプ! (結婚してください!)」

「ええっ」

「ポルッポツツポツツ! (願いはすべて叶えます、そして、絶対に貴女を幸せにします!)」


 まさかのプロポーズ。


 ――しかし、答えを発する権利は私にはなかったようで。


 そのまま謎生物に誘拐された。



 ◆



 あれから八年。

 私は、あの謎生物と結ばれ、謎生物たちが暮らす星で穏やかに楽しく暮らせている。


「ポイポポイッ! (愛してる!)」

「ありがとう~」

「ポッ! ポポポン! オイポポポッ! (昔は! 助けてくれて! ありがとう嬉しかった!)」

「これからも私はここで生きていくわね」

「ポッポポォーッ、イッ!! (やったーっ、ぁ!!)」


 こんな未来が待っているなんてあの頃はちっとも思わなかった。


 でも今はこうして生きられる今に感謝している。



◆終わり◆

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