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逞しくて強く、それでいて優しい、そんな女性との婚約を破棄するなんて残念な人ですね。

 身長は人間の男性の平均的な数値を超えている。

 髪は、色は赤茶、がしがしとした毛質。

 筋肉は全身にバランスよくついていて、まるで数多の戦場を越えてきた戦士のよう。


 ――そんな女性フェンリアは、獣人族である。


 彼女は幼い頃に人間の男性に引き取られ育てられた。


 そのため、狐のような耳があったり体型が普通の人間とは違っていて、時にそのことに触れられて虐められることもあった。


 しかしおてんばなフェンリアは気にしていなかった。


 虐められそうになれば反撃する。

 嫌なことを言われれば言い返す。


 そうしているうちに、彼女は段々虐められなくなっていって、穏やかな日々を得られそうになっていたのだが――。


「フェンリア、お前との婚約は破棄とする!!」


 婚約者ボッツァからある日そんなことを宣言されてしまう。


「な……何でだよ!? 急に!?」


 男勝りで心の強いフェンリアも、これにはさすがに驚かずにはいられない。


 動揺した彼女は表情を固くして目をぱちぱちさせている。


「そういうところだ」

「えっ?」

「お前は女性なのに可愛さがない! 淑やかさもない! そういうところが嫌なんだ」


 ボッツァははっきりと考えを言う。


「俺はもっとお上品で美しい女性と結ばれたい。それが本心だ。隠す気はない、俺は何だろうがはっきりと言う」

「お上、品……」

「とにかく! 男よりマッチョなお前と一緒になんてやっていきたくないんだ!」

「それは、仕方ないだろ? こういう体型なんだから」

「無理!」

「はぁ?」

「無理なんだ! フェンリアみたいな女は」

「マジか」

「ああそうだ。マジってやつさ」


 こうしてフェンリアは婚約破棄された。



 ◆



 縁を一つ失ったフェンリアだったが、それから数日が経ったある日、彼女にまた一つの新たな縁が舞い込んだ。


 道を歩いていた時、魔物の群れに襲われている男性がいて――フェンリアは正義感から助けに入った。力強い彼女の前では魔物の群れなど雑魚でしかなく。彼女は魔物をあっという間に蹴散らした。で、そのまま会釈だけして帰ろうとしたのだが――男性に呼び止められてしまう。


 そう、強い乙女フェンリアは男性に惚れられてしまっていたのだ。


「どうか! 恋人になってください!」


 いきなりそんなことを言われ戸惑うフェンリアだったが。


「で、ゆくゆくは結婚してほしいです!」


 いつの間にやら話は進んでいって。


 ――そして、それからしばらくして、フェンリアは彼と正式に結ばれることとなった。


 それが新たな縁であった。



 ◆



 ボッツァに婚約破棄された日からちょうど一年が経った日、フェンリアはあの時助けた男性と結婚。


 二人の関係は特別なものになった。


 彼はボッツァとは違い、逞しく力強いフェンリアを愛していた。


 一方ボッツァはというと。


 惚れた女性にプロポーズをしに行く道中で落雷を起こす魔物に遭遇してしまい、雷に数回撃たれて亡き人となってしまった。


 心ない言葉をかけられたうえ切り捨てられたフェンリアは幸せを掴み、理不尽に切り捨てたボッツァは幸せになれぬままこの世を去る。


 ――それが結果だった。



◆終わり◆

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