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婚約破棄でも何でもご自由に。ただし、勝手な行いで他人を傷つけて幸せになれるとは思わないでくださいね。

 婚約破棄、なんて、現実でよくあることとは思っていなかった。


「フリミエ! お前との婚約、本日をもって破棄とする!!」


 しかも私にそんなものが降りかかってくるなんて。

 ほんの少しも想像していなかった。


 でもその時は訪れて。


 たった今、婚約者ブリュッシアから、婚約の破棄を宣言された。


「婚約破棄……なぜです? 何か理由が?」

「ま、心当たりはないだろうな」

「はい」

「確かに、お前が自覚するような理由ではないかもしれない」

「そうですか」

「……それでも理由を聞きたいか」

「そうですね、気になります」

「なら教えてやろう。なぜお前との婚約を破棄するのか、を」


 私は何も知らなかった。

 ブリュッシアがどういう人間なのか。


「好きな人ができたんだ。名はエリカという。彼女はお前とは比べ物にならないほど素晴らしい人だ。フリミエ、お前より、ずっとずっと愛らしくて元気で明るく素直でそれでいて美しい容姿を持った――女神かと思うくらい良いところばかりの女性だ」


 ああ、そうか。

 彼はその娘に惚れているのか。


 彼女について話すブリュッシアの目つきを見れば察することができた。


 ――でも。


「お前みたいな、可愛げはなく大人しく暗めでひねくれている女とは根本的なところから違っているんだよ。そんな素晴らしい女性に出会って『なぜくだらないお前との関係を継続する必要があるのだ』と思ったんだ。で、お前とはおしまいにすることに決めた」


 どうしてそこまで言われなくてはならないの?


 確かに私は完璧ではない。悪いところだってあったかもしれない。ただ、それでも、彼のために色々頑張ってきた。彼と共に歩もうと心を決めて。その未来のために歩んできた。


 なのにここまで言われたら、さすがに傷つく。


 私なりに誠実に彼との未来を見つめてきたつもりだった。


「そうですか……分かりました。では私は消えれば良いのですね」

「ああ」

「残念です、貴方との未来を信じてきたのに」

「負け惜しみなら好きに言っていればいい」


 そうね。きっとこれは負け惜しみなのね。婚約破棄されたことが悔しくて負け組が喚いているだけ――きっと、彼にとってはそれだけのことでしかないのでしょう。私にも人の心があることに気づけない彼からしてみれば、そうとしか受け取れないのでしょう。


「ではさようなら」


 ならばそう思っていればいい。


 でも復讐はする。


 たとえそれが正義でなくても。


「ああ、早く消えてくれ」


 婚約破棄された後、親と話し合い、ブリュッシアやエリカの周囲について調査することにした。


 すると、エリカの実家が、反社会的組織と繋がっていることが判明。

 私たちは入手したその情報を新聞社へ流した。


 それによって、ブリュッシアの両親は息子がエリカと結ばれることを嫌がるようになり、最終的にはブリュッシアとエリカは無理矢理引き離される形となったようだ。


 ブリュッシアの親によって会えなくされてしまった二人は、夜中にこっそり家を抜け出して密会しようとしたのだが、その道中で獣に襲われブリュッシアが亡くなってしまったらしくて。


 その事実がエリカに伝わると、彼女は「自分のせいでブリュッシアを死なせてしまった」と感じて酷く落ち込み、その後彼女は家から出ることすらできないような精神状態になってしまったそうだ。


 ちなみに私はというと、医師の家系の男性と結ばれ、新しい道を歩き始めている。



◆終わり◆

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