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夫となった彼は愚痴ばかり言います。しかし、ある時彼が浮気してくれたことで、終わらせられることになりました。

 先月結婚式を挙げ正式に私の夫となった二つ年上の青年プルトネスはいつだって私に対して失礼なことを言ってくる。いや、失礼なこと、という言い方をすると少々高圧的な私に見えてしまうかもしれないけれど。でも彼は本当に、ことあるごとに私を不快にするようなことを言ってくるのだ。


 簡単に説明すれば、「あーあ、地味女を引き取らされるなんて最悪だなぁ」とか「もっと華のある女性と結婚しようってずっと思っていたのになぁ」とか「一生あんたみたいなやつと生きていかなくちゃならないなんて地獄そのものだわ」とか。


 彼はそういうことを本人の前であっても平然と言える人間だ。


 しかも、そんなことを言っておきながらも「自分は心が広いので離婚はしない」とか言うので、それもまた厄介なのである……。



 ◆



 結婚してから三ヶ月。

 いつからかプルトネスは私に対して愚痴のようなことを言わなくなった。

 以前はあんなに毎日のように言っていたのに。


 それが気味悪くて。


 彼の行動を調査してみたところ――リリアという女性と浮気していることが発覚した。


 私はすぐには切り出さず。

 まずは証拠を集めることに。


 知り合いの調査員に頼んで、プルトネスとリリアが一線を越えているという証拠を収集するのだ。


 それが完全になるまでは彼には何も言わない。

 普通の日々を過ごす。

 けれども心は暗かった――あんな親しげなことをよそでしておきながら彼はここにいるのか、と。


 そして証拠収集が完了した翌日。

 私は両親も交えてプルトネスと話す場を作った。


「で、何だよ? 話って、改まってさ」

「重要な話よ」

「さっさと本題に入れよ、時間は有限なんだから」

「プルトネス、貴方、私以外の女性と仲良くしているわね?」


 両親はプルトネスを凝視したまま黙っている。

 今はまだ。


「……リリアのことか?」

「どういう関係なのかしら」

「何を勘違いしているのか知らないが、リリアとはそんなんじゃない。彼女は昔からの知り合いでたまにお出掛けしたりするだけだ。べつに、浮気とかそんな関係ではないんだ」


 彼が言っているのは嘘。

 私には分かる。

 だって動かぬ証拠があるから。


「本当にそうなの?」

「何だよ、疑うのかよ」

「じゃあこれは……」


 まずは二人で写っている写真を出す。


「これは、一体何かしら」


 その写真は、二人がいかがわしい建物に入っていっている場面だ。


「こ……これ、は……」

「知り合いとこういうところに入るものかしら」

「違う! これは! リリアが体調が悪くなって、それで――」

「そう。でもこういうこともしているのよね」


 次は、路上でいちゃつく二人の写真。


 私にはまったくもって理解できないのだが。

 プルトネスとリリアは恥ずかしげもなく路上で腕や脚を絡め合っていることもあったようなのだ。


 なぜそんなことができるのか不思議でしかないが。


「なっ……なぜそれを……!?」

「嘘をついたならそう認めなさい」

「ご、誤解だ!」

「真実があるというの?」

「これはたまたま向こうがこういうことをしてきて――」

「そう。でも一回じゃないでしょう」


 似たような写真は複数ある。

 それも日が異なる写真だ。

 一回だけの出来事、そう言うのは無理がある。


「これも、これも、これも……そういうことしているわよね?」


 そこまで言うと。

 プルトネスはついに己の行いを認めた。


「だ、だが! すべてはあんたのせいだろ! あんたが地味女で無理な感じのやつだからこんなことをするしかなかったんだ!」

「随分身勝手ね」

「あんたがもっと美しければ! あんなことをすることにはならなかった! 浮気は女のせいだと言うだろう、その通りなんだよ。あんたが地味だから、あんたがぱっとしないから、全部あんたのせいなんだよ!」


 刹那、父がテーブルを強く叩いた。


「プルトネスくん、いい加減にしたまえ」


 父は本格的に怒っていた。


「我が娘にそのようなことを言うとは、最悪な男だ」


 そうね、と、母も冷ややかな視線を向けている。


「よって、離婚とする」

「え」

「君の行いによる離婚だ、いいな?」

「ま、待ってくださ――」

「ではこれにて。娘は連れて帰るよ」


 こうして離婚になった。

 手続きは父が協力してくれたので無事完了した。


 そして。


 浮気の償い、ということで、多くはないがお金を貰うことができた。


 プルトネスはその後浮気して離婚された男として有名になってしまい、ことあるごとに皆からひそひそ話をされるようになり、それによって一人で家の外を歩くことができなくなってしまったそうだ。


 あれ以降、ずっと家にこもっているらしい。



 ◆



 あれから数年、私は行きつけの喫茶店の常連客であった資産家の青年と結婚した。


 紅茶を楽しむという共通の趣味があって。

 そのため一度関わり始めるとすぐに仲良くなれたのだ。



◆終わり◆

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