大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!
「お姉さまのネックレス、いただきましたわよ!」
妹ミルフェナからいきなりそう言われたのは、ある晴れた日の朝だった。
「え。待って、それは母の形見よ。母が私に遺してくれたものなの」
「お姉さまには相応しくないでしょう」
そう、私たち姉妹の母は、私たちが幼かった頃に亡くなった。
今ミルフェナが奪った翡翠のネックレスは、母がこの世から去る直前に私に遺してくれたものだ。
母は言ってくれた、貴女にあげるわ、と。
だから、ずっと肌身離さず持って、どんなものよりも大切にしてきた。
これがあったから、どんな辛い時も乗り越えられたのだ。
ミルフェナと違ってあまり運が良くなかった私は、災難に多々見舞われて来たけれど、それでもいつも母の形見が私の心を支えてくれていた。
「こういう綺麗なアクセサリーは美しい娘にこそ相応しいんですわよ」
「ミルフェナ! 奪う気!?」
「あら、奪う、だなんて……人聞きが悪いですわね」
「貴女は貴女で貰ったでしょう? 確か、指輪とか……。どうして私のものにまで手を出すのよ!?」
「このネックレスはあたくしにこそ相応しい! だからいただくだけのことですわ。奪った、なんて、そんなのではありませんの」
勝手だ、勝手過ぎる。
「返して!」
「嫌ですわ!」
「酷いわ! ミルフェナ! 泥棒!」
「何とでも言えばいいんですのよ、あたくしはただ相応しいものを身につけていたいだけですわ」
その日は一日中泣いてしまった。
ずっと心を支えであったそれを奪われた。
その事実が辛すぎて。
馬鹿げていると分かってはいても、それでもなお、涙が止まらなかった。
だが、不思議なことに、その日を境に運は良くなった。
ミルフェナに誘われていつか引いた宝くじが当たった――それも、一番高額な一等だ。
また、ファンだから貢ぎたいと申し出る人が多数発生してきて、毎日のように高級品が私宛に届くようになった。
商店街のがらがら抽選に三回挑戦すると上から順番に三つの賞が当たりいろんな良い景品が貰えた。
そして、まさかの、資産家からのプロポーズ。
結婚までできることとなった。
一方妹ミルフェナはというと、あのネックレスを身につけるようになった日から驚くくらい不幸になっていった。
ラブラブだった婚約者がいたのだが突然婚約破棄を告げられ、やたらと何もないようなところで怪我をするようになり、かなり頻繁に風邪を引き寝込むようになった。
あのネックレスは、もしかしたら、呪われているのかもしれない。
だとしたら、奪われて良かったのかもしれない。
◆終わり◆




