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ある晩餐会にて、私が誰よりも愛している妹が婚約破棄されたうえ暴言を吐かれました。~精々その行いを後悔してください~

 ある晩餐会にて、私が誰よりも愛している妹であるミルキーが婚約者ルフトから告げられる。


「お前との婚約、本日をもって破棄とする!」


 突然放たれた言葉がミルキーの心を引き裂いて。

 彼女はその場で崩れ落ちてしまった。

 それでも彼は躊躇などせず心ない言葉を発することを続ける。


「ミルキー、お前は貞操観念だ何だと言って俺の望みを叶えなかった。そんな女をいつまでも傍に置いておくと思ったか? だとしたら馬鹿だな。姫でもない、王でもない、ただの女の癖に。調子に乗るなよ」


 ミルキーは脱力して無になったような顔で座り込んでいる。


「ねえミルキー、ここから離れましょう?」


 声をかけてみても彼女は何も返してくれない。


「お前は最低な女だ! 俺をがっかりさせてばかりで! 許せないようなやつだ!」


 ルフトからの言葉の暴力は続く。周囲からは「ちょっと言い過ぎよね」とか「酷くない?」とかこちらに味方するような言葉が小さい声でではあるが聞こえてきていて、それに少し救われた気がした。皆が敵というわけではないのだと、そう思えたから。


 けれどこのままここにいてはミルキーがどうなってしまうか分からない――だから私は彼女を強制的にその場から引き離すことにした。


 私は脱力し人形のようになってしまっているミルキーを腕と背を使って支えるようにしながら移動し退室した。



 ◆



「体調大丈夫? ミルキー」


 あれから一週間ほどが過ぎた。

 今は家族四人で家で暮らしている。


「お姉さま……」


 ミルキーは一応生きている。

 食欲は減退しているようだけれど。

 でも死んでしまいそうではない。


 私としては、愛するミルキーが生きていてくれればそれでいい。


「どうかした?」

「……ありがとう、お姉さま、いつも色々」

「え!? どうしてそんなこと。礼なんて要らないわ。姉だもの、何かあった時に協力するのは当然のことよ」

「ううん、当然じゃないと思う……本当に、いつもありがとう」


 ミルキーとルフトの婚約は破棄となった。


 けれどもそれで良かったのだと今はそう思う。


 あんな風にミルキーを傷つけるような人と結婚してミルキーが幸せになんてなれるはずがないから。


「お姉さまがいてくれて良かった……」

「そう? 良かった! そう言ってもらえたらもっと頑張っちゃう!」

「ふふ」

「え?」

「お姉さま、やっぱり面白い」

「ええっ!?」

「そういえば昔もそうだったよね、お姉さまは私が落ち込んでいるといつもおかしなことして笑わせてくれて……」


 おかしなこと、て。


 あまり自覚はなかったのだが――でも彼女がそう言うならそうなのだろう、当時の私はきっとそんなことをしていたのだろう。


「そ、そうだっけ?」

「懐かしい」

「そっかぁ、あまり覚えていないけど」

「お姉さまってとても良い人よね」

「え!? な、なななな、なぬぬぬ!? 照れちゃう! 照れちゃうよ!?」

「落ち着いてね」

「ふぅ、ふぅ、ふっうっ……」


 あの後ルフトは幸せにはなれなかったようだ。というのも、ミルキーへの酷い行いが世に出てしまったそうなのだ。それによって女性からの評価が著しく下がったそうで、多くの女性から少し関わることさえ拒否されるようになってしまったそうだ。


 彼は今、孤独に喘ぎ、いつも泣いているらしい。


 しかし自業自得だ。

 あんなところでわざわざ婚約破棄宣言をし暴言まで吐いたのだからそうなったとしても仕方のないことだ。


 精々苦しんでくれ。


 思う存分傷つき泣いてくれ。


 そうでなくては、ミルキーが報われない。



 ◆



 あれから数年、私もミルキーもそれぞれ幸せな結婚をできることとなった。


 ミルキーとは今でも時折会っている。

 そうして幸せな今について語らう。

 それが何よりも嬉しく楽しく愛おしい時間なのだ。


 たとえそれぞれ違う場所で生きていても、それでも、私たちはいつまでも仲良しな姉妹。


 これからもずっと仲良しでいたい。



◆終わり◆

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