婚約者の幼馴染みだという女が婚約を破棄させようとしてきましたが、はっきりした態度を取れる彼のおかげで撃退できました。
「覚悟して! 素晴らしい彼をあんたみたいなくだらない女には渡さない! 絶対奪ってやるから!」
同じ年の青年リードと婚約して数日が経ったある日、彼の幼馴染みだと話す女性ミレーネからそんなことを言われてしまった。
何でも、ミレーネはリードのことを好きだったそう。
だからリードが私と婚約したのが許せないのだとか。
そんなことを言われても理不尽過ぎるのだが……。
だってそうだろう? 私はミレーネと交際していたリードを奪ったのではない。ミレーネがリードを想っているというのは、あくまで、彼女の中での感情だ。リードは私を選んだ、それが事実だ。なのに私が悪いの? 私に非があるというの? そんなはずないのに。
◆
それからというもの、ミレーネはリードへの超積極的なアプローチを開始したようだ。
しかし効果はなかった。
というのも、リードはミレーネのことをあまり良く思っていなかったのだ。
「ミレーネっていたじゃん? あいつ、ほんと、鬱陶しいんだ」
「彼女、私にも敵意を向けてきていたわよ」
リードはいつだって正直者だ、ミレーネとの間のことでも隠そうとはしない。
でも、だからこそ信頼できる。
彼と一緒にいるようになってから――起きたことを隠さないというのは信頼を高めるためには重要なことなのだと再確認した。
「ほんと最悪なやつだよな……君にまで手を出そうとするなんて……」
「リードは彼女のことどう思っているの?」
「嫌いだよ」
「そう……」
「そうだ、今度、一緒に来てくれないか?」
いきなりそんなことを言われて戸惑う。
「どういうこと?」
一応質問してみると。
「実はさ、ミレーネに呼ばれてるんだ。そこに君を連れていって、もうそろそろはっきり告げたいと思って」
「……迷惑じゃない?」
「巻き込んでごめん、とは思うけど」
「迷惑ではない?」
「もちろん! というか、むしろ、来てほしいんだ」
「そう、分かった。じゃあ一緒に行くわ」
そして、待ち合わせ場所へ二人で向かう。
「緊張してる?」
「ええ……、だって何を言われるか」
「大丈夫だよ、きっと護るから」
「……ありがとう、リード」
そうして待ち合わせ場所へ到着。
そこにはおめかししたミレーネがいた。
「あ! リードぉ――って、な!? なんであんたまで!?」
「僕が頼んで来てもらったんだ」
「リードが?」
「ああ。ミレーネ、もう二度と僕らに関わってこないでくれ」
「え……」
「僕は彼女だけを愛している。だから何があっても心は変わらない。何をされたとしても、な。だからもう僕たちの関係を壊そうとしないでくれ」
リードは淡々と言葉を発した。
するとミレーネは涙をこぼした。
ぽろぽろ、と、瞳から滴がこぼれ落ちる。
「リードぉ……酷いよぉ、そんなの……どうして、どうしてその子ばっかり見るの……あたし、ずっとずっと、好きだったのにぃ……」
しかしリードの目つきは冷ややかだ。
「嘘泣きするな」
ミレーネはまだ泣いている。
「次に僕らに関わってきたら、その時は容赦なく撃退する。分かったか? ではな。僕は彼女だけを愛しているから、二度と近づくな」
その後ミレーネは近寄ってこなくなった。
後に聞いた噂によると、ミレーネは女がいる男にやたらと手を出し、その結果社会的に終わらせられてしまったそうだ。
今は一人自室にこもって一日中ぶつぶつ何か言っているそうだ。
それ以外のことはできない精神状態らしい。
◆
「私たち、これで正式に夫婦になれたのね」
「そうだな」
結婚式を終え、私たちの関係は新たな一歩を踏み出した。
「なんというか……ちょっと変な感じね」
「嫌な感じか?」
「いいえ、嬉しい感じ。少し浮かれそう」
「なら良かった! はは、嬉しい」
「リードも?」
「もちろん!」
私は彼と共に歩む。
いつまでも。
どこまでも。
◆終わり◆




