いつまでも水鳥を眺めていたい人生です。~婚約破棄を越え、それでもなお己の道を貫きます~
美しい湖が近くにある家で生まれ育った私は、いつもそこで水鳥を眺めていた。
なぜか?
特に深い意味などはない。
ただ単にそうすることが好きだっただけ、性に合うっていただけのこと。
そんなことから周りからは『変わり者娘』と呼ばれていた私にも、何だかんだで一応普通なところもあって、それは婚約者がいるところだ。
婚約者エッフォードン、彼は釣りがとても上手い人だった。
彼との関係は悪いものではない。
そう思っていた。
そこに迷いなんて一切なかった――のだが。
「お前との婚約、破棄するわ」
ある日突然宣言されてしまう。
彼が言うには、変わり者と婚約しているとからかわれるのが嫌だったらしい。それで婚約を破棄しようと思うようになったそうだ。
そこを言われてしまったらもうどうしようもない。
私が変わり者なのは事実だから。
「そうですか、分かりました。ではそうしましょう。婚約は破棄としましょう。……さようなら」
私は彼の前から去ることにした。
説得しきる自信なんてなかったから。
――その翌日、エッフォードンは亡くなった。
朝釣りに出掛けたきり戻らなくなり、心配した親が様子を見にいったところ、湖に沈む彼を発見したのだそうだ。
その話を聞いた時、とても恐ろしいと思った。
けれど幸いもあって。
それは犯人が私であると勘違いされなかったこと。
その点はとてもありがたかった。
婚約破棄された恨みで殺した、とか思われたらどうしよう――そんな風に思っていたから。
こうして彼はあの世へ旅立った。
その後私はある時湖の畔で知り合った少々おっとりした青年と結ばれ、あれから数年が経った今も幸せに暮らせている。
色々あったけれど不幸になる未来でなくて良かった。
私は今日も水鳥を眺める。
でももう一人ではない。
愛する彼と共に、美しい姿を眺め続けるのだ。
◆終わり◆




