婚約破棄されたので自力で生きていきます! ~冒険者生活は忙しくても自由で楽しい~
「せいっ! とあ! とりゃっ、はいっ! せい! はいはいはいはい! とりゃあッ!!」
本日の成果、熊型魔物討伐数六十七。
一日戦ってこの数、となれば、私にしてはそれほど多くはない。だが悪い数字ではない。成果としては中の上くらいか。
私は今二十三歳。
冒険者として剣を振るい働いている。
仕事は主に魔物討伐だ。
こんな私ではあるけれど、数ヶ月前までは冒険者を引退し妻となる予定の女だった。
しかし!
もうすぐ婚約という頃になって婚約者ルフレーンの浮気が発覚してしまったのだ。
そして、その件について話していたところ、ルフレーンが急に怒り出し婚約破棄を告げてきて。
そうなってしまってはもはやどうしようもなくて、そのまま彼とはお別れということになってしまった。
結婚間近ですべてを失った私。
これからのことをどうすれば良いか分からなくなって困っていた。
そんな時に知人から仕事に誘ってもらえて。
かつて剣士をしていたことがあったこともあり私はその仕事に挑戦してみることにした。
ルフレーンがいなくても生きてゆける!
そう思いたかったこともあって、自力で生きていくすべを見つけようと思ったのだ。
そうして働いているうちに、あっという間に地域一位となることができた。
――そして今に至っている。
「レジアさん! こんばんは! 今日も討伐で?」
「ええ」
「お疲れ様ですっ。調子、どうです?」
「そちらは?」
「ええとぼくは、その……うーん、まぁまぁ、ですかね」
声をかけてきたのはスルフィエン。
異性の後輩だ。
「いやぁレジアさん、いっつも凄い成果ですね!」
「そうかしら」
「平均五十八ですよね? 聞きましたよ?」
「いつの間にか噂が流れていたみたいね」
「そうですよ! 皆レジアさんのこと尊敬しているんですよ!」
「それは言い過ぎよ」
「ええーそんなことないですってー」
「ま、ありがとうね褒めてくれて」
スルフィエンはまだまだ成果を挙げられていない冒険者だ。
なぜかいつも付きまとってくる。
「あ! そうでした! この前言ってたルフレーンとかいう男の人の話なんですけど!」
「情報があった?」
「はい! 何でも、彼、仕事で残念なことになったみたいで――」
スルフィエンから聞いた話によれば、ルフレーンはあの時浮気していた相手だった女性と結婚したそうだが結婚後少しして仕入れの工程で大きな失敗をしてしまったために心理的に追い詰められて死を選んでしまったそうだ。
また、夫を失ったことで、女性も心を病むこととなったそうだ。
「そうだったのね……」
「あれれ? 嬉しくないんですか?」
「まぁ……複雑よね、残念なことになっている、なんて」
「ええっ」
「何をそんなに驚いているの?」
「いや、てっきり、不幸になってほしいと思っていたのかと……」
まぁそれもないことはない。
でも実際聞いてしまったら。
どうしても少しばかり気の毒に思ってしまう部分もある。
「レジアさんて優しいんですね!」
「まさか。それはないわ」
「即否定!? いやいやいやー。あ、まさか、無自覚系!?」
◆
二十五歳の誕生日、かつて後輩だったスルフィエンと結ばれた。
「これから色々よろしくね、スルフィエン」
「もっ、もちろん! ですっ! どうか、よろしくお願いいたしますっ」
◆終わり◆
 




