婚約破棄されましたが、姉妹同時結婚で幸せになれました!
生まれつき何かと不運だった私は、ことあるごとにずっこけてきた。
もちろん、物理的に、ではない。やたら転倒して、という意味ではなく。残念な出来事に見舞われる、という意味である。
最近で特に残念だったのは、婚約者エルリーに婚約破棄を告げられたこと――これは想定外のことだったので驚いたしそれと同時に悲しみも覚えた。
仲良しだと思っていた。
仲良くあれていると思っていた。
なのにエルリーは「他にもっと魅力的な女性を見つけたから」とさらりと言って私との関係を無理矢理終わらせたのだ。
こんなことって……、と思ってしまい、それからの日々は憂鬱で。
笑うことさえ簡単にはできなくなってしまって。
辛い、消えてしまいたい、とさえ思うような夜も多々あった。
だが。
「お姉さま、結婚の話がありますの」
「ネリ。どうしたの? 何の用?」
「何でも、同時結婚を望まれている方がいらっしゃるそうで」
そんなある日、意外な話が飛び込んできた。
結婚。
そんな言葉聞きたくもなかったけれど。
でも可愛い妹が提供してくれた話だから無視はしなかった。
そう、妹であるネリとの関係だけはとても良いのだ。
「同時結婚?」
「ええ、姉妹での同時結婚ですの。兄弟と姉妹で結婚する形だそうで」
「何それ!?」
そんな話は聞いたことがなかったので驚きだった。
「そういう希望だそうですわ」
「ええ……」
「わたくしも驚きました。けれど姉さまと共に生きてゆけるならそれも悪くはないかな、と、そう思いまして」
ネリはとても可愛らしい容姿の持ち主だ。
そして心も美しい。
身も心も清らかでとても愛らしい存在。
まさに天使ッ!!
「それは私だってそうだわ。ネリと一緒にいられるならそれに越したことはないわよ」
「良かった」
「じゃあまぁその方向で、考えてみましょうか」
「ええ! では父にそう伝えてきますわ!」
「ありがとうネリ」
その後私とネリは同時結婚希望の兄弟がいる家へ行き、そこで長男次男と顔合わせをして生活のことや将来のことなどを喋った。それから徐々に交友を深め、私は長男と、ネリは次男と、それぞれ結婚することにした。
ちなみに結婚後は四人で住むらしい。
これならネリとずっと一緒に暮らせる。
とても嬉しいことだ。
このために運を捨ててきたのかもしれない、なんて思うくらいだ。
◆
同時結婚から五年、私たち四人は今も一つの屋根の下で穏やかに楽しく生活できている。
「お姉さま! 今日の夕食メニューですけれど、シチューとハンバーグ、どちらが良いですか?」
「うーん……ネリは?」
「わたくしはどちらでも!」
「そう、特に希望はないのね?」
「はい!」
「じゃあ……シチューはどうかしら。今日は寒くなりそうだし」
「素敵ですわ!」
そういえば、エルリーはあの後破滅したそうだ。
女性に貢ぐために借金を重ね続け、返済が到底追いつかないような状態に陥ってしまったらしくて。
その結果、金貸しの男らに誘拐され身の自由を奪われて、毎日穴を掘る仕事を強制されているそうだ。
もちろん賃金などない。
金貸しの気が変わらない限り彼は一生そこで働き続けなくてはならない、というような状況らしい。
ま、彼がどうなろうがもうどうでもいいことだが。
「じゃ! シチューにしますわね! 色はお楽しみっ」
「楽しみだわ。ネリは料理上手だものね」
「うふふ! お姉さまに褒めていただけるよう頑張りますわ!」
私たちはこれからも幸せに満ちたこの家で生きてゆく。
◆終わり◆




