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私を要らないもの扱いし婚約破棄してきた彼はその後自滅したようです。

「お前はもう要らなくなった、だから婚約は破棄する」


 三つ年上の婚約者エーデルハルガートからそう告げられたのは、小雨降る日のことだった。


 青い空は見えず、厚みのある灰色の雲で覆われている、すっきりしない――そんな日。


「婚約、破棄……?」

「ああそうだ」

「なぜ?」

「わざわざ言うまでもないだろうが、お前よりもっと俺に相応しい女性が現れた。だからお前と関わっている暇はなくなった。一応保険がてらお前と婚約していたが、もっと相応しい人が現れたのならお前の存在価値はゼロになったと言っても過言ではない」


 エーデルハルガートはすらすらと言葉を紡ぐ。


 私を切り捨てることに躊躇いなんて少しもないのだな――改めてそう思った。


「俺は俺に一番相応しい人とこそ結ばれたい。なぜならそれが優秀な遺伝子の保存に繋がるからだ。だから、お前とは、もう無理なんだ」


 窓の外、雨は徐々に強まる。


 そして私の胸の内も。

 次第に悲しみの雨で濡れてゆく。


 共に歩める。

 共に生きられる。


 そう信じていた。


 けれどもそれは所詮夢でしかなかったのか。


 彼にとって妻というものは己の優秀な遺伝子を後世へ残すための道具でしかない、だとしたら――。


「そうですか、分かりました。寂しいですが、では、私はこの辺で」


 結局ここで粘っても幸福な未来は訪れないのだろう。


 もし子が宿らなかったら?

 もし子が優秀でなかったら?


 きっと全部私のせいにされる。


 ならば彼とはここで離れておく方が良いのかもしれない。


 今は辛くても、だ。


「受け入れます。さようなら」


 こうして私は彼と離れて生きる道を選んだ。


 その結果何が起こるかなんて分からないけれど。

 それでも私は選択を後悔せず生きようと思う。



 ◆



 あれから二年、私は色々あって王子ミルージュの妻となっている。


 はじまりは、エーデルハルガートから婚約破棄を告げられた日。あの日の晩、私が庭で育てている大量の花の中の一輪が青白く輝いていた。そして、翌朝、城から遣いがやって来て。それによって、その輝く花が、国を護る力を持った特殊な花だと知った。何でも、数十年に一輪国内のどこかで咲くらしい。けれども、大事に育てられていなかったら絶対に出現しないそうだ。


 それから私は城へ連れていかれた。


 私は伝説の花を育てた人として国王に紹介され、その頃に城内でミルージュ王子と出会う。


 それから少しして絶賛婚活中だったミルージュ王子が私を気に入ってくれたようでお付き合いするようになり、やがて結ばれた。


 二年、というと、短い時間のように思われるかもしれないが……私としては感覚的には短くはなかったような印象だ。


 そうして今、私は、ミルージュ王子と共に穏やかに幸せに暮らせている。


 また、城の中庭である程度自由にガーデニングをさせてもらえるのもありがたい。


 なんでも国王が許可を出してくれたそう。

 そういう意味では国王にも感謝しなくては。


 ちなみにエーデルハルガートはというと、あの後、必死にアプローチしてあの時言っていた女性と何とか結婚したそうだが、子どもがなかなか宿らず。その苛立ちから妻に当たり散らすようになり、しまいに殴ってしまったらしく。その件で地域警備隊に拘束されてしまったそうだ。それ以降は村の端にある牢に入れられ、鞭打たれながら日々強制労働させられているそうだ。


 かつてのエーデルハルガートの姿はきっともうないのだろう。



◆終わり◆

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