学園時代に知り合い婚約まで行った彼が裏で他の女性と関わりを持っていました。~涙こぼしながらでもお別れします~
婚約者となった青年ロメンと知り合ったのは学園であった。
学生が集まるパーティーにて初めて顔を合わせ少し言葉も交わした私たちはすぐに仲良くなって。
会うととても楽しくて、ずっと一緒にいたいと思うくらいで――気づけば婚約するに至っていた。
彼との縁は運命だ、そう思ったくらい。
私は彼といるととても楽しかったし、彼もそう言ってくれていた。
だからこの先もずっと、夫婦になっても、共に同じ道を歩めるものと思っていたし信じていた。そこに迷いなんて一切なく。子どものような穢れなき真っ直ぐな心で、彼との未来を信じることができていたのだ。
――その時までは。
「ねーえ、ロメン、本当に今夜でいいのぉ? 婚約者さんにばれなぁい?」
「ああ大丈夫だよ」
「そう? ならいいけどぉ。厄介事にならないようにしてよぉ?」
「あいつ勘の鋭さとか皆無だからさ、どうせ気づかないって」
いかがわしい宿泊施設の入り口、ガラス扉の前で、ロメンが私は知らない女性と喋っていて。
その時すべてを察した。
思えば、いつも夜は会ってくれなかった――。
そうだ、私は、騙されていたのだ。
この時になって気づいた。
ロメンが言う通り、私は勘は鋭い方ではない。
このことにも気づかなかったくらいだし……。
私は撮影魔法で二人が一緒にいる姿を記録し、そのまま気づかれないよう走り去った。
この世にはこれほどの悲しみと絶望があったのか――そんなことを考えている変に冷静な私も脳内にはいて、けれども、目からは水が溢れてくる。
私は愚かだった。
どこまでも。
真っ直ぐに信じて、彼の裏での行動にも気づかず。
己が馬鹿だった。
それが何よりも悔しかった。
その後私は親にこのことを相談した。すると父は怒り「わたしが終わらせてやろう」と言ってくれて。それから少し手続きをして、父は、撮影魔法で押さえた写真を使ってロメンとの婚約を破棄してくれた。
ロメンとの関係は終わった――切なく悲しかったけれど、でも、もっと傷つく前に別れられてよかったと思っている部分もあった。
◆
あれから八年。
私とロメンは真逆のような人生を歩むこととなった。
私はあの後父の紹介で知り合った裕福な家の息子である男性と交流するようになり、刺激的な感情こそなかったが穏やかな仲良しさを手に入れられた。
それからお互い意向を確認して。
将来を誓い合い、結婚するところまで至ることができた。
子にも恵まれ、私は温かな家庭を築くことができた。
今はもうロメンのことなんて気にならないくらい――夫と子に支えられている。
一方ロメンはというと、あの時の女性とは結ばれることはできなかったそうだ。というのも、うちからの償いの金を支払いが彼女にも行ったのだ。その件で女性の親はロメンに激怒、女性の親は二人の関係を強制的に解消させたそうだ。
結果的に私も女性も失うこととなったロメンは、やらかしが世に出たことで社会的な評価も下落し、会社での扱いもそれまでとは真逆のとても悪いものとなったそうだ。
彼にはもう何もない。
ロメンには、家庭はないし、温かく接してくれる人もいない。
でも自業自得だろう。
◆終わり◆




