婚約者とその母妹から嫌みなことを言われたうえ婚約破棄されましたが、ガラスの靴を履いて出会った王子と結ばれました。
私にはエーベルリッヒという赤茶色の髪が特徴的な婚約者がいたのだが――
「お主とはもうやっていけぬ! よって、婚約は破棄とする!」
――ある日突然そんなことを告げられてしまった。
エーベルリッヒは少々古風な思想の持ち主で、女性は淑やかに家でじっとしているべきと思っている。だから活発な私があまり良く思われてはいないということは察していた。
けれどもまさか婚約破棄されるとは思わなかった。
だって、婚約破棄なんて、人生を大きく左右すること。そこまでして離れたいと思われているとは思わなくて。それはさすがに想定外だった。
しかも驚いたことに。
「あんたみたいな女、あたくしが大事に大事に育てた可愛い息子には相応しくないのよ!」
エーベルリッヒの母親からもそんなことを言われてしまって。
「あなたみたいな人が義理のお姉様になるなんて心折れるわ、くそでしょそんなの。ぜーったい嫌だわ」
エーベルリッヒの二歳年下の妹からもそんなことを言われてしまった。
どうやら彼は家族で私を拒んでいるようで。
だから私にできることはなかった。
もはやできることはその場から離れることしかなかったのだ。
「そうですか、さようなら」
ただそう言うことしかできなかった……。
◆
あれから数年、私は何でも屋を営み稼いでいる。
稼ぎはそこそこ多いはずだ。
同年代の女性の中ではかなり稼いでいるはずだ。
そんなある日。
「ねぇ、そろそろ結婚は?」
「ええっどうしてそんなことを言い出すのよ母さん」
「あれから何も進んでいないわね」
「今は仕事をしていたいの、それが楽しいんだもの」
「もう……相変わらずね。ああそうだ、良いパーティーがあるのよ。ほら! ガラスの靴晩餐会!」
「ええー、何それ」
こうして私は『ガラスの靴晩餐会』に参加することとなった。
◆
強制的にガラスの靴を履かされる晩餐会である『ガラスの靴晩餐会』に参加した私は、階段でうっかり豪快に転倒してしまったところを王子に助けられ、それがきっかけとなって王子との縁が生まれ――やがて彼と結婚することとなった。
まさかの展開だ。
後に知ったのだが、『ガラスの靴晩餐会』には、王子が結婚相手を探す会という側面があったようだ。
実は、だが。
ちなみにエーベルリッヒはというと、私が王子と結ばれたことを悔しく思ったのか私の悪口を言い広める活動を始めた。それが王子を苛立たせて。王家に関係する者に無礼な発言をした、ということで、王子の権限によってエーベルリッヒは拘束された。そして牢へ入れられたのだが、そこでの態度がかなり悪かったため、彼はさらに厳しい牢屋へ送られることとなった。で、そこで暴力事件を起こしたそうで。しばらく強制労働させられ、その後使えなくなると処刑されたそうだ。
◆終わり◆




