強大な魔術の才能、その代償として、非常に肥えやすい肉体を持っていました。なので仕事に生きるつもりでいたのですが……?
強大な魔術の才能を持って生まれた私は、その代償として、非常に肥えやすい肉体を持っていた。
そのため幼い頃からかなりぽっちゃりしていて。
周囲からは「何でそんなに太るの」などと言われてしまったこともあるくらいだった。
そんなだから、年頃になっても異性から興味を持たれず――否、持たれないどころか、陰で悪口を言われるといったことも多々あった。
けれども彼らを責めようとは思わなかった。
私が肥えているのは事実だから。
面と向かって言っているのでないということは私に直接言う気はないということだろう。
だから流しておくことにした。
聞いてしまったのが不運だったのだ、と思って。
そんな私は結婚が難しそうなので魔術師として探し物をしたり日常の悩みを解決したりと仕事に打ち込んでいたのだが、一定の年齢になると親から「良い人を見つけてきたから! 婚約しなさい!」と言われ、ポルカ・レッツァという青年とほぼ強制的に婚約させられることとなった。
けれどその関係すら長くは続かない。
「お前みたいな女! 見ているだけでげんなりする! よって、婚約は破棄とする!」
「もう一週間後結婚式ですよ?」
「知るか! 我慢の限界なんだ! ああ、なら、式までに痩せられるか? しゅっとしたモデルレベルの体型になれるか? なれると言うなら婚約破棄しなくてもいいが……どうだ? なれると誓えるか?」
そこまで言われてしまったら――これはもう別れるしかない。
「無理なのでやめておきます」
「だろう!」
ポルカは勝ち誇ったような顔をしている。
何がそんなに嬉しいのか。
「ではそういうことで……さようなら」
「ああ! さよなら!」
その後私は仕事に戻った。
あれこれ失礼なことを言ってきた親とは縁を切り、一人、この才能を武器に仕事をして生きていくことにした。
一人ぼっちでも負けたりしない。
唯一の才能を活かして社会で戦っていく。
皆にできないことをやっていこう。
◆
――数年後。
あれから働き続けた私は、今では国で一位二位を争うくらい優秀な魔術師となっている。
仕事は嘘みたいにどんどん舞い込んでくる。
だから休みなどない。
けれどもこの力を存分に活かせている。
そんな日々はとても楽しい。
それに、理解者も現れた。
資産家の息子であるトゥリアー、彼は私にいろんな形で協力してくれている。
また、私が何もしなくても肥えてしまう理由についても、彼はきちんと理解してくれている。
しかも!
先日、プロポーズしてくれた。
共に生きようと言ってくれたのだ。
私はもちろんそれを受け入れた。
よく知っている彼と生きてゆくなら、別段大きな不安はない。
ちなみにポルカはというと、複数の美しい女性に手を出し、やがて女性たちの親から叱られることとなってしまったよう。
また、一部の女性には裁判まで起こされて、お金ももぎ取られることとなってしまったそう。
資産は減らされ、女性との関係は失い、社会的な評判は地に堕ち――ポルカは社会の地底で孤独に生きてゆくしかないようになってしまったらしい。
◆終わり◆




