姫である私の婚約者となった彼は裏で凄まじく借金を重ねていました。~残念ですが共には歩めません~
王国オーランドの姫である私カイナ・オーランドは、二十歳になって間もなく、貴族の出の青年であるポッツォと婚約した。
「いやぁ~、カイナ様と結ばれることができるなんて嬉しいですよ~」
「これからよろしくお願いしますね」
「もぅ~それはそれは! もちろん! よろしくです~」
ポッツォは少し軽さはあるものの陽気な男性で、だから、そういう人も悪くはないなと思っていた。
私はどちらかというとあまり明るくはないタイプだ。
だからこそ明るい人には尊敬の念を抱く部分がある。
――しかし、婚約から数ヶ月が経った頃から、何やら怪しい噂が流れ始める。
ポッツォが姫の婚約者という名称を使ってどんどん借金しているらしい。
噂はそんな内容だった。
私は一度彼を呼んで確認したけれど、曖昧に話を終わらされてしまって、詳しくはよく分からず。仕方がないので国王である父に相談。すると今度は父が彼を呼び出して話をしてくれることになった。
そしてその場で彼は白状したのだ――姫の婚約者だと言って威張りながら借金をしていたことを。
「話にならん! よって、我が娘カイナとお主の婚約を破棄とする! そして、お主は、王族に迷惑をかけた刑で牢へ送る!」
ポッツォはその後言われていた通り牢へ送られ、そこで他にも複数の問題行為があったことが発覚したために処刑された。
彼は私に対してはある程度きちんと振る舞っていたが、裏ではいろんな人たちに随分威張り散らしていたようだ。
姫の婚約者になれたのがそんなに嬉しかったのだろうか。
でも、いずれにせよ、私への愛があったわけではないことは確かだ。
彼が求めていたのも、彼が手に入れられて喜んでいたのも、私ではなく私の姫という地位だったのだろう。
「良かったわねぇ、あの人、いなくなって」
「それよね」
「姫様に威張られるならまだしも、姫様の婚約者になっただけの男に威張られるなんてね。ほんと、あり得ないわ」
後に侍女らがそんな話をしているのを聞いた。
その時は彼女らに対して非常に申し訳なく思った。
侍女たちにも迷惑をかけていたなんて、と。
やはりもう少し慎重に相手を選ばなくてはならない、と思った。
ちなみに、彼が勝手に重ねていた借金の返済は彼の両親と親戚に義務があるものと定められた。
――その後二年ほどが経って、私は自国で一番儲かっている企業の社長の息子と結ばれた。
彼は少々おっとりした人だが包容力があって何事にも寛容な人だ。
そんな彼のことを私は愛している。
そして彼も私のことを好いていると言葉で表現してくれている。
彼と共に、未来へと歩もう。
今は迷いなくそう思っている。
◆終わり◆




