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学園時代に知り合った婚約者が留学中に他の女と仲良くなり、帰ってくるなり婚約破棄してきました。

 私エルフィナと婚約者の彼セタスは学園時代に知り合った。出会いのきっかけはセタスがやたらと声をかけてくるようになったこと。それをきっかけとして、私たちは時折関わるようになった。当時の彼は私のことを凄く気に入ってきて、ことあるごとに私の前へ現れては「将来を誓いあいたい」とか

「結婚してほしい」とか言ってきていた。最初は真面目に相手していなかったのだが、卒業の時になってプロポーズされ、親が喜んでいたこともあって婚約することになった。


 が、婚約期間中にセタスは中期留学に行くことになった。


 彼はその留学中に女を作って。

 深い関係となったようであった。


 で、留学終了後。


「俺、彼女と生きることにしたから、お前との婚約は破棄する」


 女性を連れてきて、そう告げてきた。


 栗色の艶のあるセミロング、長い睫毛、アーモンド型の目にベージュの瞳。身長は低めで、小動物的なわざとらしい動作を徹底している。


 セタスが連れてきたのはそんな女性だ。


「本気で言っているの?」

「うん。ごめんな、エルフィナ」

「他の女を好きになったから、そんな理由で婚約破棄できると思っているのかしら」

「お前が何を言っても無駄だ。俺の心はもう決まっているから。俺は彼女――リリシアと共に生きる。真実の愛を見つけたなら、もう、お前と偽りの関係を続けることはできない」


 セタスの答えは少々ずれていた。


 真実の愛だと?

 ふざけている。

 婚約者がいる身で他の女性に気を移しておいて真実の愛などと言えるという心理が理解できない。


「いいな? エルフィナ。分かってくれ。大人しく去ってくれ」

「それは契約違反よ。償いのお金を支払ってもらうことになるわ。それでもいいのかしら」

「いい! それでも、俺は真実の愛を信じ、そのために生きるんだ!」

「分かったわ。じゃ、それでもいいわ。償うのなら」

「ああ!」


 セタスに迷いはないようだった。


 金より彼女を優先する、ということか……。


 でも、そういうことなら、私が何を言おうとも無駄だろう。

 彼のしたいようにすればいい。

 どうでもいいと思われつつ婚約者でいるのもそれはそれで悲しい。


「本当にいいのぉ? セタスぅ」


 甘ったるい声を発する栗色の髪の女性リリシア。


「いいんだよ」

「でもぉ、鬼みたいな婚約者さんに何かされたりしない?」

「大丈夫。絶対に何もさせない。どんなことがあっても俺が守るさ」

「本当にぃ?」

「もちろん! 愛があれば絶対に護れる!」

「えへへ~。ありがとぉ、好きぃ」


 セタスとリリシアは迷いなく私の目の前でいちゃつく。


「ごめんなさいねぇ、婚約者さん~」


 リリシアはあざとく拳を口もとに添えながらこちらへ視線を向けてくる。


 笑顔ではあるのだけれど。

 目つきが少し黒い。


「リリシア、君は本当に優しい子だな。謝るなんて。でも謝らなくていい、だって、君は何も悪くないんだ」


 その黒さにセタスは気づいていないようだ。


 そうして私とセタスの関係は解消された。

 彼は償いの金を私へ払うこととなった。

 それをもって私たち二人の関係は完全に断たれることとなる。



 ◆



 数ヶ月後、実家で生活していた私は、セタスがリリシアに捨てられ精神崩壊したという話を聞いた。


 セタスはあれからもリリシアに家を買ったり高級品を贈ったりとかなり貢いでいたそう。しかし、セタスの貯金に尽きの影が見えてくると、リリシアは段々彼に対して冷たく接するようになっていったそう。で、やがて、セタスはリリシアから別れを告げられたそうだ。


 それによって心が壊れたセタスは、今、親に介護してもらいながら何とか生きているようだが。

 自力でできることはかなり限られていて、状況などお構いなしによく分からない踊りを踊ることくらいしかないそうだ。



 ◆



 セタスとの婚約から一年三ヶ月、私は、王子と結婚することが決まった。


 彼との出会いは、近所の職業不詳のおじさんに「よければ都で行われる食事会に参加しないかい?」と言われ食事会に参加したこと。


 その食事会にて、私は王子と出会った。


 出会った瞬間特別な何かを感じた。

 それはあちらも同じだったようで。

 私たちはあっという間に距離を縮め、結ばれる方向へ進むこととなっていったのだ。


 こんな未来が待っているなんて夢にも思わなかったが、これもまた一つの人生。


 今は前を見つめていようと思う。


 愛してくれる人と幸せに。



◆終わり◆

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