大嫌いだった妹が婚約破棄によって崩壊しました。会ったことはないですが、婚約破棄してくださってありがとうございます。おかげで今平和です。
高圧的だし、いちいち鬱陶しいし、意地悪してくるし、大嫌いだった妹ルレシアが――
「きぃええええええええええ!!」
婚約破棄されて家に帰ってきた。
良家の子息との婚約、ということで偉そうに私を見下しつつ自慢してきていたルレシア。
しかし婚約前に告げていた情報に嘘が混じっていたことが判明し、終わりを告げられてしまったらしい。
嘘を言っていたということに関しては正直驚かない。
だってルレシアは嘘が好きだ。
彼女は人を悪者に仕立て上げるような嘘でさえ簡単に発してしまう人間だ。
だからそんな重要な時であっても平然と嘘をつけるのだろう。
「あの男ぉぉぉぉぉ! ひとを嘘つき呼ばわりしてぇぇぇぇぇ! こんなに可愛いのにぃッ! 許せないッ! 許せないわッ! こんなに可愛い女なんてこの世に滅多にいないのにぃぃぃぃぃぃぃーッ! 後悔させてやる後悔させてやる絶対に後悔させてやるからあああああああああ!!」
ルレシアは激怒していたけれど、私にはなぜそんな反応なのかまったくもって理解できなかった。
自分が嘘をついておいて、ばれて切られたら怒る?
なぜそんなことができる?
まさか、本当に、自分には非がないと思っているのだろうか。
明らかに非しかないと思うが……。
だが、彼には感謝している。
なぜならこの件以降ルレシアが大人しくなったからだ。
私を虐めてこないようになった、これは大きい。
しかしルレシアは段々引きこもりがちになり、しまいには自殺未遂を繰り返すようになり、やがてある晩自ら命を絶ってしまった。
◆
ルレシアの死から二年半、私は今日結婚する。
相手は平民の生まれながら自分の力で商売をして富を築いてきた男性。
私とは歩んできた道がまったく異なる人で。
けれども、いろんな要素、すべてが異なるからこそ――お互い惹かれ合っているような気もする。
そうそう、そういえば、なのだが。
ルレシアとの婚約を破棄したあの良家の子息である男性は、あの後絶世の美女を妻とし今でも幸せに暮らしているようだ。
良かった、彼が幸せになれて。
知り合いではないし直接何かをしてもらったわけでもないけれど、でも、彼はある意味恩人だ。
だから幸せになってほしいと思っていた。
◆終わり◆
 




