婚約破棄を告げられた日の夜、お告げがありました。~舞って生きてゆきます~
「お前との婚約は破棄とする」
告げられ、心が砕かれる。
その日の晩。
そろそろ寝ようとしていると、突如、頭部に白い光が降り注ぐ。
何事かと思っていると。
『貴女には道があります。貴女はこの国を護る儀式を行う聖女の生まれ変わり――ですから、これからは、国を護るために舞いなさい』
そんな声が聞こえてくる。
誰の声?
聞いたことのない声だ。
『舞い方は明日の朝には覚えていることでしょう、その方法に従って舞いなさい』
「は、はい……」
不思議な体験をして、眠りについた。
そして翌日。
「舞い、って……こんな感じ、かな?」
漠然と分かる気がする。
だから私はそれに従いやってみる。
身体を動かし、歌い、舞う。
「ああ~はいっはいっ、それっ、ほいほい! あ~それはいほいほれちょっさぁ! ほれちょっさぁ~っほれはいそれそれはいっ!」
思っていたより意味不明な歌詞、けれども私は脳に現れた文字をそのまま読むように歌っていく。
「ああ~いい、うえお~、かかきっ、くくくぅ~っ、けこ! さささんし~すっせせそぉ~っはい! たちっ、つつてぇ! とぉなぁ、にっぬね! のぉ~っ、はい! ははははははい! はい! はい! ほれ! はい! はい! しょしょ! はい! ほらしょっとら! はいぁ~っ、と! けれしょ! けれしょ! ほいしょ! とれとら! しょ~っこい! はいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいー……とぅぉっ、しゃ!!」
その後この謎の舞で有名人になった私は、国王に気に入られ、城で舞えることとなった。
それから私の人生は大きく変わり――いくつもの災難を舞いによって去らせた功績を讃えられて『優秀国民』に認定された。
しかも、城で活動しているうちに王子に見初められてしまい、彼と結婚するに至った。
そうそう、これは旧友から聞いた話なのだけれど。
かつて私を切り捨てた彼は、あの後謎の災難に凄まじい勢いで見舞われてしまい、嵐のような悲劇の中で心身ともに疲弊してゆき――最終的には、普通は数日で治るような風邪をこじらせて亡くなってしまったそうだ。
「ああ~いい、うえお~、かかきっ、くくくぅ~っ、けこ! さささんし~すっせせそぉ~っはい! たちっ、つつてぇ! とぉなぁ、にっぬね! のぉ~っ、はい! はい! はい! ほれほれは! いぃっ!」
けれどもうそんなことはどうでもいいことだ。
「はいっ、とれ、しょっ! こら! あい! あい! あい! ほれ! ああ~ぃほれしょっ、とらしょっ、へい! ほら! へいへへい!」
私は舞い続ける。
この国の未来のために。
◆終わり◆




