ずっと姉である私を虐めて遊んでいた妹ポレアは婚約者がいる身で他の男と遊んだために婚約破棄されました。
ずっと姉である私を虐めて遊んでいた妹ポレアは、二十歳になって間もないある日婚約者ができた。
その婚約者はオーガンデという名で、整った容姿と良いとされる家柄を持ち事業を上手く展開させて富も築いているという、完璧という言葉が似合う人であった。
「やっぱりわたくしモテてしまいますわ~、ね? お姉さま? 貴女はご存知でしょう、わたくしが素晴らしい殿方から好かれやすいこと!」
「そ、そうね……」
「ま! 何かしらその反応。まさか、そうじゃないとでも言いたいの?」
「べつにそんなことないわ」
「あ! 分かりましたわ! 羨ましくて悔しいんですのね? あーあー分かってきましたわよー? 羨ましくて、わたくしがモテることを認めたくないんですのね? あっははは! 確かに! お姉さまはモテませんものね!」
羨ましい、とは思わない。
ただ、真実を知らないとは恐ろしいことだな、とは思うけれど。
だってそうだろう?
ポレアは姉をずっと虐めて笑っていたような女性だ。
でもそうと知らず婚約までする人が出てくる。
きっと彼だって真実を知っていれば婚約なんてしないだろう。
知らないからこそ婚約できる、ということではないか?
彼女のような人間を伴侶にしようと思える、というのは、無知ゆえなのだ。
――それから数週間が経って、ポアレは、飲み屋で知り合ったオーガンデではない男性と交際のようなことを始めた。
「いいの? 婚約者がいるのに」
「は? 何様のつもりですの? 偉そうな女! 何でもわたくしの勝手ですわ! 放っておいて!」
当時こんな会話をしたけれど。
ポレアは婚約者がいてもなお他の男性と仲良くしたいと思っているようであった。
けれど、その後少しして、ポアレの行いがオーガンデにばれてしまう。
オーガンデは激怒。
ポアレとの婚約を破棄する、と宣言した。
「な、な、何なんですのあいつーっ! あんなことくらいで婚約破棄だなんて! きぃぃぃいいいいぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃぃ! モテないからって束縛してぇぇぇぇぇッ!!」
婚約破棄されたポアレは鼻水と涙を垂らしつつ悔しがり怒っていた。
「許せませんわぁぁぁぁぁぁ! 後悔させてやりたいですわぁぁぁぁぁっ! 婚約破棄とかわたくしを馬鹿にするようなことをぉぉぉぉっ、よくもぉぉぉぉっ!! きいぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃぃッ!!」
それからしばらくポアレは荒れていたが、一週間ほどが過ぎたある日の夕暮れ時、怒り過ぎ力み過ぎて倒れ――そのまま彼女は還らぬ人となった。
「あそこの妹さん、怒り過ぎて倒れたそうね」
「ええ……」
「それで亡くなられたみたいよ」
「ぎょっ」
「そうなの……でも、他の男に手を出してて婚約破棄されたんでしょ? まぁそれじゃあ自業自得よね?」
ポアレの死後、近所の人たちはよくそのことについて喋っていた。
「それはそうね。でも、力み過ぎて死亡なんて、哀れね」
「そうそう」
「でもまぁ良かったんじゃない? あそこの妹さん、性格かなり酷いみたいだったし。お姉さん虐められていたみたいだったし」
「お姉さんからしたらラッキーかもね」
その後私は運良く気が合う人に巡り会え、結婚にまで至ることができた。
そして今は、彼の仕事をたまに手伝いつつ家事をしたり昼寝をしたりと、ある程度自由に楽しくゆったりと過ごせている。
◆終わり◆




