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婚約者が他の女と遊んでいることが発覚したため、婚約を破棄することにしました。~今さら謝っても遅いのです~

 私とオーレルは婚約者同士。

 珍しく自分たちの意思もあっての婚約だった。


 皆は私たちのことを羨ましがっていた――想いあえる人と結ばれるなんていいなぁ、と。


 けれども、私たちの婚約は思っていたより上手くいかなかった。


 というのも、婚約してから一ヶ月と少しが経った頃から、オーレルに女の影が見え始めたのだ。


 何度かさりげなく様子を窺うような質問を投げてみたけれど彼は何もないというように振る舞っていた。どうやら隠す意思はあるらしく。私の思い違いではなさそうだった。


 できれば私の勘違いであってほしかった――けれどもそれは叶わない夢だったみたいだ。


 ということで、私は、オーレルについて調査を始める。


 調査組織に頼み、そういった調査の専門家に調べてもらうことにした。それが一番賢いと思ったからである。何でも、できるなら専門家に頼むに越したことはない。


 そして、調査の結果、オーレルがやはり定期的に一人の女性と会っているということが判明。


 しかもその仲は深いようで。

 既にかなり発展してしまっているようだ。


 あがってくる証拠はとても耐えられないようなものばかり。


 私は彼との婚約を破棄することを決めた。



 ◆



「オーレルくん、きみ、我が娘という者がいながら他の女性とも深い仲になっているそうだね」


 婚約破棄は父に伝えてもらうことにした。


「え? あの、それは一体……何か勘違いされてはいませんか? お父さん、きっと誤解ですよ」

「しかし、既に、証拠が出ているのだよ」

「証拠? まさか。あり得ません。だって僕、やましいことなんてしていませんよ」

「……これを見てもそう言えるのか?」


 父は写真を一枚出す。


「勘違いだと言うのなら、この写真は何なのだ?」

「あ、そ、それはですね。仕事のお付き合いです。その女性とは仕事だけの関係で、恐らく、たまたま二人でいたところを撮影されてしまったのですね。誤解ですよ、やましいことなんてありません」


 父はさらに写真複数枚を取り出す。


「ならばこれらは? なぜ二人でこのようなところへ入っていっている?」


 それらの写真を目にした瞬間、オーレルは顔色を変えた。


 顔の筋肉を強張らせ。

 目の周囲をぴくぴくさせている。


「異性とこういうところへ行くというのは……明らかにそういうことだろう? これすらも勘違いというのか?」


 追い込まれたオーレンは。


「……す、すみません。その、これは、その……ちょっとした、気の迷いで……、申し訳ありません!! すみませんでした!!」


 さすがにもう否定することは諦めたようだ。


「し、しかし、心は娘さんだけです!! 絶対に!! 心は絶対に浮気していません!! 男なら分かってくださるでしょう? 男にはそういうことな必要なのです、心とはまったく別の話なのです!!」


 呆れ顔になった父。


「……もういい。ま、最初からこうしようと思っていたのだ。きみと娘の婚約は本日をもって破棄とする」

「なっ……ど、どうして! そんな! 酷いですよ!」

「酷い? こういうことを行ったきみの方が酷いではないか。我が娘は悲しんでいたのだ、きみに酷いと言われる筋合いはない」


 オーレンは泣いて謝る。

 しかしもはや手遅れ。

 彼がどのような行動をしたとしても私たちの心は変わらない。


「捨てないでえぇぇぇ……」


 彼は私へもそんなことを言ってきた、けれど。


「さようなら、その女性とお幸せに――オーレンさん」


 もう情けをかける気なんてない。


 私は彼を切り捨てた。



 ◆



 その後私は別の男性と結ばれ幸せな家庭に入ることができたのだが、オーレンはというと裏で仲良くしていた女性と幸せになることはできなかったようだ。


 聞いた話によれば「婚約者に捨てられたので君と生きていきたい」と言ってポロポーズしたところ「重いし、そういう言い方って不愉快」と返されて断られてしまったらしい。


 また、拒否された際に酷い言葉も結構な数かけられたらしく、それによって彼は重度の女性不信になってしまったそうだ。


 それ以来、彼は女性と話すどころか近づくことさえ難しくなってしまったようで、それからは一人の女性とさえ関わることはなかったとのことである。


 彼は今、自宅の自室で一日のほとんどの時間を過ごしているとのことだが、世話をしてくれている母親とはかなりの頻度で口喧嘩になっているとのことだ。しかも、時には殴りかかりそうになったり暴れそうになったりということもあるらしい。



◆終わり◆

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