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婚約破棄され絶望し死のうとしかけていたら……誰かがその片腕を掴みました!? ~それはハッピーエンドへの道~

「あんたなんか嫌い! 消えて! 二度とあたくしの前に現れないで!」


 婚約者の女性ローゼンマーリにそう言われた日の夜、僕は絶望に染まっていた。


 僕は彼を愛していた。けれども向こうは同じではなく。彼女は僕を愛してなどいなかった。


 ――その事実があまりにも辛くて。


 僕は家の近くの崖へと駆けていた。


 そんなくらいで死ぬつもり?

 男なのに心弱すぎじゃない?


 そんな風に言われるだろうか。


 でも辛いものは辛いし、駄目だと分かりながらも終わりにしたいと思ってしまう心は男女共通のものなのだ。


 思えば、ローゼンマーリはいつからか僕の人生のほぼすべてになっていた。


 彼女の笑顔を見たい。

 その一心で生きてきた。


 でも、悲しいけれど、それは僕にはできないことだった。


 ああ、もう、終わりにしてしまおう――。


 飛び降りかけた、瞬間。


「待って!!」


 声がして、片腕を何者かに掴まれる。


 振り返ると。

 そこには一人の平凡そうな若い女性がいた。


「何する気!? 駄目よ、飛び降りたら!!」


 なぜだろう、その言葉に心縛られて。


 僕は死を選ばなかった。


「何かあったの? 話を聞くわ、何でも聞かせて? あ、もちろん、話せそうならで構わないけれど……」

「いや、いいよ、こんな暗い話をしたら君まで不幸にしてしまう」

「そんなことないわ! 辛いのでしょう? なら吐き出さないと。きっとまた苦しくなるわよ」

「……どうして、君は」

「言えることだけでもいいのよ。吐き出せばきっと少しは楽になるはず」

「……ありがとう、じゃあ、少しだけ」


 それから僕はその女性に話を聞いてもらった。



 ◆



 あれから三年。

 僕は今、あの日崖で出会った女性と結婚し、既に第一子にも恵まれている。


「流し、掃除しておくね」

「ありがとう!」

「あと、拭き掃除用タオルも洗っておいたよ」

「助かるわ!」


 僕は僕にできることを。

 いつもそう思って。

 家庭内でも自分にできることを探して協力するようにしている。


 だって彼女は恩人だ。


 死のうとしていたのを止めてもらった――この恩は生涯にわたり返してゆかなくてはならない。


 ちなみにローゼンマーリはというと、あの後、良家の子息と結婚したそうだ。けれど、わがまま過ぎて、相手との関係はあっという間に悪化。ローゼンマーリは次第に毎日殴られるようになり、ある時全身ぼろぼろの状態で家から逃げ出したそうなのだが、その最中通りすがりの熊に襲われ死亡したそうだ。



◆終わり◆

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