妹が勝手に婚約者との関係を解消して他の男性に乗り換えました。しかも、婚約者だった人は姉である私に押し付けてきました。
妹ニーナにはポッズという婚約者がいた。
けれども彼女は彼のことを良く思っていないようで。
いつも愚痴ばかり言っていた。
あんなパッとしないやつ嫌い、とか、もっとかっこいい人と結ばれたいわ絶対最後まで諦めないんだから、とか。
私から見ればポッズは悪い人ではなさそうに思うのだが……けれどニーナはどうしても彼を受け入れられないようだった。
そして、ある日。
「お姉さま! ちょっといいかしら」
「どうしたのニーナ」
「ポッズとの婚約だけれど、破棄しましたの」
「え」
「で、ポッズはお姉さまにあげることにしましたわ」
「ええっ」
ニーナの口から出てくるのは驚くくらい身勝手な言葉たち。
「というのも、わたくし、もっと良い殿方と婚約できることになりましたの。だから彼はもう用なし。そういうことですわ」
「そんな……」
「ですから、ポッズの相手はお姉さまがしてちょうだい」
「いいの? そんなこと、勝手に」
「うっさいですわよ! いいから、お姉さまはポッズと婚約して彼の面倒をみておいてちょうだい!」
こうして私は意外な流れでポッズと婚約することとなった。
そしてニーナはというと。
美男子と女好きで有名な青年オルドレーと婚約した。
「ええと、貴女が……ニーナさんのお姉さまですか?」
「はい。リィナといいます」
「そうでしたか。僕はポッズ、どうぞよろしくお願いいたします」
「妹が勝手なことを……申し訳ありません」
「いえいえ! リィナさんに罪はありませんよ。むしろ貴女は被害者でしょう! ……すみませんね、僕みたいなのと婚約することになってしまって」
接してみて再確認したけれど、やはりポッズは悪人ではない。
これは確かなことだ。
彼は他者を傷つけるような人ではない。
「そんな! 妹の勝手によってこうなったのです、ポッズさんも被害者です。どうか、そんな風に仰らないでください」
「ありがとう。……救われます」
こうして私はポッズと結ばれ、幸せになれた。
刺激的な恋ではない。
刺激的な関係ではない。
ただ、確かな安心感が、彼といると感じられるのだ。
「ポッズさん、きっと、幸せになりましょうね」
「もちろん! リィナさんを幸せにできるよう頑張ります」
◆
あれから三年、私は今もポッズと共に生きている。
彼との相性は悪くなくて。
温かい家庭を築けていると思う。
意外なところからの幕開けではあったけれど、彼に巡り会えて良かったと心から思える。
これからも共に歩みたい。
支え合いながら。
前を見て、少しずつ進みたい。
ちなみにニーナはというと、オルドレーに散々浮気された挙句そのことを問い詰めたところ婚約破棄されてしまい、心を病んだ。
それから何度も自殺未遂を繰り返し、今は親の意向で施設に入れられている。
かつての気ままだけれど可憐な彼女はもういない。
今生きているのは、抜け殻のようになったニーナだけだ。
結局彼女は幸福は掴めなかったのであった。
◆終わり◆




