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傍らに異世界は転がっている  作者: 慧瑠
Chapter3 グールグル

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Chapter3-6

 なんか脈打ってる気がする足場を意識から外してペッカートルさんの後をついていけば、体感で俺がセラの元へたどり着いた半分ぐらいの時間で地下から出てこれた。

 そこからも先頭を歩くペッカートルさんの後を十分ぐらいついていくと、なんかオシャレな店の個室へとたどり着き、更に十分程で亜古宮さん達と合流したわけだが……。


「亜古宮さん……どういう状況ですか、コレ」


「見ての通りですよ?」


「見ても理解できないから聞いてるんですよ?」


 なんでそんな、え? 分からないの?みたいな表情で見てくるんですか。分かるわけ無いでしょ。隣のセラだってどうして良いか分からず、スマホすら触らず静かにしてるレベルですよ。

 そりゃそうだよ。だって亜古宮さんが連れてきた二人、片方はどうみても絶世の美女って言ってもいい感じの人だけど……もう片方は、あれ人間ではないよな。首元からチラ見してる肌はゴム質感あるし、優雅に紅茶飲んでるけど一口飲む度に弛んだ皮膚を伸ばすみたいな仕草やめてもらえませんかね。

 何より異物の気配が一切しないし、これだけ見た目が異質なのに存在感が二人からは感じないのがもう怖い。


「説明は要らないと思ったんですが、一応紹介しておきますね。こちらグールのタナカさん、そしてグールの女王の***さん」


「すみません、グールの女王の?」


「***さん。あぁ、えーっと、ミネさんです」


 何か亜古宮さんは納得してるけど、俺はできてませんよ? その口は動いて音は出てるのに、聞き取れないこの感じは何とも言い難い。だけどまぁ相手は亜古宮さんだから言及しても時間の無駄になりそうだし、一切納得はできないけども今はそれより気になる事が多すぎるのも事実。

 いやね、この……なんだろう。俺、グールの調査をしていたはずなのに、目の前の結果を出されてどう反応すりゃいいんだろう。


「あー……初めまして、長野 晴久です」


「初メましテ、タナカです。お連レの方ノお名前も伺ってモ?」


「あ、セラ 篠原っていいます。よろしくお願いします」


 とりあえず自己紹介をしてみたものの、セラが何かしおらしい。そして少しカタコトだけどタナカさんが予想外に普通に友好的な感じで焦る。

 隣のミネさんとの温度差がヤバい。普通に返してくれたタナカさんとは違って、俺とセラを一瞥するだけして、ペッカートルさんと数秒目を合わせて大きなため息を付いた後は我関せずで紅茶を飲んでる。

 そんなミネさんに俺は自己紹介してとは言えないっす。


「お姫様は日本語が達者じゃないの。恥ずかしがっているだけだから安心していいですよ」


 ふふふっとペッカートルさんからのフォローがあったけど、ミネさんの指先から伸びた爪が眉間に突き刺さってますけど。

 そっちはギャグのつもりかもしれませんが、俺は気が気じゃないです。気が緩むどころか張りすぎて吐きそう。


「えーっと、それで亜古宮さん、色々と聞きたい事はありますけど、とりあえず俺等がしていた調査っていうのは終わったんですか?」


「いいえ、終わっていませんよ。ただ少し状況が変わったと言いますか、色々と共有しておかねばならない事ができたので合流を優先しました」


 あぁ、胡散臭い笑顔の亜古宮さんが更に胡散臭く笑っている。嫌な予感しかしないが、もうここに来てしまった時点で聞く以外の選択肢はないんだろうなぁ。


「では――」


 そんな事を考えている中、亜古宮さんは話しを続けていき、終える頃には俺は頭が痛くなった。


 曰く。

 グールの女王ことミネさんと、今回俺等が調査していたグールは派閥というか生まれが違うらしい。タナカさんはミネさんの血縁であり、古くからこの地で細々と生きている。

 では、調査しているグールはなんなのか。

 ミネさんとは別の女王の子達……なんてことはなく人工的に作られたグールで、その昔”人間でやるのが非人道的ならグールを使えばいいじゃない!”な精神の研究者が作った実験の為のグールらしく、後始末も行わないまま研究者は行方不明。残った実験グールが繁殖をした結果らしい。


 そしてここからが厄介な所。

 人工グールだけの話であればタナカさん達だけでも処理ができたんだと言う。しかし、その実験の再開を指示した偉い人と、阻止したい偉い人が水面下で色々やりはじめてしまい状況が悪化。

 実験自体に興味はないが、その悪化した状況を利用したい偉い人も参戦。

 その状況を利用したい偉い人に巻き込まれたのがペッカートルさんと一三さん……におまけで亜古宮さんが巻き込まれて、色々な経験があってもいいだろうと亜古宮さんの思惑で俺とセラが巻き込まれた。


「ちなみに、一三さんとペッカートルさんを巻き込んだ偉い人は、どういう感じの目的があるとかは?」


「いい質問ですね。ですが残念ながらそこまでは分かりませんでした。ただ私の予想になりますが、既に目的は達成されていて結果はどちらでもいいのでは? と考えています。どう思いますか?」


 亜古宮さんの視線が俺からペッカートルさんへ。対するペッカートルさんは、口元こそさっきまでと変わらない笑みのままだけど、合わせている目、その瞳は真剣そのもので俺が初めてあった時と同じ様に何かを見定めている様だ……。正直怖いんだよねあの瞳。


「……さぁ、私には分からないわねぇ」


「晴久君の前で探り合いをするのもいいですが、今はお客様も来ていますしそういう事にしておきましょう。という事で晴久君、いい質問でしたが今後の方針について話を進めましょう」


「あ、全然。気になっただけなんで」


 もう俺の腹は悲鳴を上げているんだ! この上で腹の探り合いとか、何が出てくるか分かったもんじゃない!

 次だ次。もうセラがなんでかカチコチで俺の調子も狂うから次に進んで終わりにしよう。


「ではお待たせしました。そちらのお話をお聞きしましょう」


 ありがとう亜古宮さん。俺の腹の調子を察してくれて。


「ン。もうイイのか? 別ニ急いでいなイから続ケでもらっても構わナイ。女王モ楽しんで居ル」


「この辺にしておかないと晴久君のご帰宅の時間が遅くなってしまいますから」


亜古宮さんの言葉につられて時間を確認してみれば、なんとまぁもう十八時過ぎ。どうやら察してくれての事ではないっぽい。

 それにしても、あぁ……俺が抜けてからも続けてたら、雅人はもう鍬の魔王になってしまっているだろうな。


「そうイウことなら……女王は今の紛イ物にお怒リなんデス。以前の時とハ違い、今の紛イ物には女王の声が届かなイ。それは敵対でハなく暴走。女王はソレを許シません」


「えっと質問なんですけど、その、声が届かない理由とかも分かってるんですか?」


「再開シタ人間達が手を加エスぎて我々から外れすぎタ」


「あー、そういう感じですか」


「一年程前からダ。フェリド・ロイナスという人間ガ関与し始め、紛イ物共の活動が活発にナッタ」


 フェリド・ロイナス? なんか、ロイナスってどこかで聞いた気がす――「ロイナス!?」 うおッ!? びっくりしたぁ。

 今まですんごい静かだったのに急に声を張るなよ。あ、でもそうか。聞き覚えあると思ったら、最初に会った時にセラがそんな名前出してたっけか。


「まさか私が知ってるフェリド・ロイナス?」


 その問いかけは、亜古宮さんやタナカさんではなく、明らかにセラの視線的にミネさんに向けられている。

 え、何? セラ、もしかして知り合いなの? タナカさんとの自己紹介の時、お初の雰囲気だった気がしたんだがタナカさんだけお初だった感じか。

 なんて事を考えながら亜古宮さんに視線を送ると、俺の聞きたい事は察したものの亜古宮さんもセラとミネさんの関係性は分からないみたいで首を小さく横に降って返してくる。


「……」


「……そう、ですか」


 ミネさんはセラの言葉に頷いただけだが、セラ的にはそれで十分だったようで静かに俯いて黙ってしまった。


「シノハラさんが奴トどういう関係かハ聞かなイ。だから断っテくれても構わナい。元より拒否権はそちらにある上での依頼をシたい」


 セラを気遣ってなのかは分からないけど、タナカさんは少し間を開けてから淡々を話を続け、その流れに合わせて亜古宮さんは懐からシンプルなブレスレットを二つ、テーブルの上に並べておいた。

 なるほど、これが今回の亜古宮さんのひみつ道具ね。


「女王かラの依頼は、"同胞へ危害を加えない。そして紛いモノの処理"の二つだ。報酬は成果に応じて支払ウ。できるだけ数を減らして貰えればそレデいい」


 あー、処理って事は、きっとそういう事なんだよな。


「受けるとしてもナガノ君やシノハラさんでは見分けをつけるのは難しいだろう。そこで女王の協力の元で亜古宮に頼み用意したのがそのブレスレット。それを付けていて襲いかかってくるのは紛いモノだ。迷わず処理をしてくれて構わない」


 気がつけばゴム質感や異常な弛みがなくなって、どこにでもいそうな普通の中年と見分けがつかなくなったタナカさんは、最初よりも流暢に、それでいてもやっぱり淡々と言い終えて俺等の返答を求める視線を向けてくる。

 しかしどうしたものかなぁ……。処理してくれて構わないって言われても、多分俺にはできそうにないんだよな。

 俺等じゃ見分けがつかないからブレスレットを用意したってことは、大体がタナカさんぐらい人間の見た目してるって事で、それを処理は……うん、無理だ。だからとペッカートルさんに全部丸投げってのもなんか違う気がする。


 となるとやっぱり――



---

--



「良かったの?」


 タナカさん達との話し合いを終えて、俺はとりあえずセラを泊まっているホテルまで送っている途中、思い詰めた表情のセラがそんな事を聞いてきた。


「まぁ、いいんじゃね? なんとかなるでしょ」


 良いか悪いかで言えば多分悪いけど、断るつもりだった依頼を俺は結局受ける事にした。

 あんな内容の依頼をセラが受けるのに、俺だけ受けないのはダサいなって。なんかいつものセラと違ってかなりピリピリした空気してたし、そのロイナスさん?って人の事も気になるっちゃ気になるし。

 ただロイナスさんの事に関しては、今のセラには聞きづらい。絶対不機嫌になる。


「ってもやっぱり処理とかはまだ覚悟が決まってないし、情けないけどその辺はペッカートルさんに頼ろうぜ」


「ん? あぁ、えぇ、うん。気分のいいものじゃないしね」


 まぁ、気分の良い悪いに関わらず、そんな覚悟は要らないのが一番だと俺は思う。思いはするけど、友達にさせるぐらいなら一緒になり先になり覚悟を決めるぐらいの気持ちは……俺にもあるらしい。



トラブルで更新がかなり遅れました。



ブクマ、評価等々含め、お読みいただきありがとうございます。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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