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傍らに異世界は転がっている  作者: 慧瑠
Chapter3 グールグル
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Chapter3-4

 ペッカートルさんと顔合わせをして無事に一週間。

 一三さんからセラが異物に呑まれかけてる……とか言うイマイチ理解できない助言を受けて一週間。

 そう言われてセラの様子を見ていたけど特に変化のない一週間。

 異物に呑まれるって意味を亜古宮さんに聞いてはぐらかされてから五日。

 なんだかんだであっという間の一週間。

 つまるところ、何が言いたいかと言うと――調査の成果はなーんもありません!


「どうすんだよ。くっそ歩いて回ったにも関わらず何も得られないなんて……本当にいんのかよぉ」


 あんまりにも痕跡一つすら見つからないから、一昨日は昼終わったら早退して調査したってのに……結局なんも見つからなかった。セラもセラで調べてるみたいだけど、似たような感じっぽいしなぁ。

 本当は今日にペッカートルさんと合流して情報交換するはずだったが、なんか向こう側の事情で明日の学校終わりに伸びたのはいいけどさ。一日伸びた所でなぁ。


 そんな感じに自室でパソコンを使って音楽を聞きながら机に伏していると、起動しっぱなしの通話ツールの着信音が流れてきた。


「雅人じゃん。暇なんかあいつ」


 画面を見れば、いつも雅人が使ってるハンドルネームが主張している。

 調査に行く気も失せてるし、気分転換にはちょうどいいか。


「おーっす」


『めーっす』


「くだらねぇ返ししてくるじゃん。どしたん、話聞こか?」


『草。どっこいの返しありがとう。ってことで最近やれてなかったし、暇してるならゲームしようぜ。ゲーム』


「いいぞ。何やるよ」


『先輩から卒業制作で作ってるやつの話されてさ。なんか意見欲しいらしいからそれやらん?』


「データ送れるならそれでいいぞ。流石に取りに行くのは面倒」


『URL送るから、そっから飛んでくれりゃ多分いける』


 少し待てばチャットでリンクと多分ダウンロードに必要なパスワードが送られてきて、そこに飛べば簡単なゲームの説明とかが書いてあるサイトへに繋がった。

 アクション系のゲームか……意外と容量必要だなこれ。卒業制作って言ってたからあんまり期待してなかったけど、案外しっかりしてて面白そう。


「マルチできんの?」


『先輩曰く最大四人マルチらしいぞ。マルチプレイで安定できてるかとか、自分の環境以外だとどうだとか意見欲しくて、今はゲームしてそうな知り合いに片っ端から声掛けてるらしい』


「あね。これサーバー立てたりは?」


『一応ゲーム側でルーム作成みたいなのがあって簡単にマルチプレイ自体はできるって聞いてる』


「少し時間掛かりそうだわ。終わったら言う」


『うい』


 待ち時間は特に何もせず今度出る新作や、今やっているゲームのアップデート内容やらを話していると、途中一段落した辺りで雅人は何か思い出したかのように声を出した。


『そういやこの前、晴久が話してたグールのやつ。俺も調べてみたけど、あんま役に立ちそうなのはなかったぞ』


 あぁ、そういやあまりにも進捗ないから、適当に濁しながら雅人にグールどこいるか知ってる?みたいな事を話したんだった。

 まさかあの後調べたりまでしてくれるとは。


「調べてくれただけでもありがてぇ」


『何も成果なかったけどなぁ。でもちょっと面白そうな噂は見つけたぞ』


「噂?」


『晴久のバイトって、そんな感じの噂話の調査したりもするんだろ? もう知ってるかもしれんけど、二ヶ月ぐらい前から何かマンホールとか地下の横断歩道とかで変わった音するとか言う話がチラホラあったぞ』


 グールの事聞いた時、モノ探しの他にそんな事してんの?的なのに、そんな感じの事を言ったなぁ。別に間違ってないだろうから訂正する気はないけど、なんかゴメンな雅人。


「変わった音? 聞いたこと無いな、そんな噂」


『っても色々種類はあるみたいだけどな。今そのショート付きのまとめリンク送ったわ』


「あざ。見てみるわ」


 追加で送られてきたリンクへと飛ぶと、幾つかの動画に対して不特定多数の人達が色々と意見を交わしていた内容がまとめられている。

 とりあえず……と思ってマンホールが写っている一本の動画を再生してみると破裂音っぽい音が断続的に聞こえてきた。他の動画も場所こそ違うけど、確かにそこでは聞こえ無さそうな音が録音されているが、正直何か音の種類は一つじゃない気はするけど何かとは分からんなこれ。


「誰かが爆竹で遊んだかぁ?」


『さぁ? 考察では銃声が一番近くね?みたいな話はしてるけど、マジだったら普通に犯罪よな』


「音が小さかったり、反響してたりでそう聞こえるだけで、流石に銃は無さそうだけどな。あぁでもエアガンの可能性もあるか」


『まっ、もしバイトで調べる事になったら、場所ぐらいまでなら調べられそうだから言ってくれよ』


「そん時は頼むわー。よし、起動できたからやるべ。ホスト任せた」


『おーう。やるべやるべ』


 タイトル画面もしっかりしてるな。マルチは……あぁ、雅人しか部屋作ってないから探すまでもないか。キャラは全部むさいな。とりあえずモヒカンでいいや。


「ムービーまであるんか」


『そういやこのムービーのどれかのキャラ新道理事長らしいぞ』


「まじかよ」


 とは言っても、理事長の声なんて覚えてねぇよ――。

 ――。

 ――やばい。このゲーム超面白い。

 気が付けば既に四時間も経ってるし……これ本当に卒業制作かよ。


『ゲーム制作に携わりたいとかで、入学した時から作ってたらしいけど……すげぇな』


「ね。普通にハマりそうだもん」


『一応今はチームらしいけどな』


「それでもでしょ。っと雅人、西の都から緊急依頼来たわ」


『俺も物資納品依頼来てるわ。まーた東の都が戦争ふっかけてるだろコレ』


「俺のクエにはモンスター討伐数のカウントあるから、多分スタンピードじゃね?」


『ま? 俺さっきのダンジョンの後、装備修理してないから無理なんだけど』


「だから修理しとけって言ったのに……鍬で戦うしかねぇな」


『まーた戦闘で俺の農業スキル熟練度あがっちのかぁ』


「大丈夫大丈夫。一揆も農具使ってたから、実質農業――ん? あ、ちょい都向かってて」


 雅人の返事を聞きつつ、スマホに通知が来ている事に気づいて見てみれば……セラからか。

 結構通知来てんな。んーと、あー、セラはちゃんと調査してんのか。共有してる地図に探索済みの場所を塗りつぶした画像が定期的に送られてきてるわ。ついでに、その場所の写真やらも何枚か。

 ごめんねセラ。俺、今、ゲームしてるの。罪悪感はすごいけど、ゲーム楽しいの。


『用事なら今日はここまでにしとくか?』


「いや、セラからだから大丈夫。ただなんて返そうかなぁと」


『ゲームしてるでええやん』


「多分蹴飛ばされるからノーで」


 って言っても代わりになる理由もないしなぁ。どうしよ。素直にゲームしてますって言ったほうが、ソフトタッチな蹴りですむかなぁ。


「ん? なんだコレ」


 "卵見つけた!"の言葉と一緒に今送られてきた画像には、確かに卵とセラのサムズアップしている手が写っていた。

 傾かない様に、なんか、なんだ? なんかよく分からない繁殖したカビみたいなので固定されている卵っぽいのは分かるんだが……デカくね? 写真だから正しいかは分からんけど、周りに写ってる机とかから察するに俺の膝ぐらいまであるんじゃないか?

 ダチョウの卵でも十五、六センチだぞ。


「雅人、膝丈ぐらいの卵って何の卵?」


『は? 何? 納品クエ?』


 雅人にも画像を送ろうかとした所で、セラから次の画像が送られてきた。

 屈んで卵と同じぐらいの高さでツーショット。


「何やってんだ……」


『大丈夫か?』


「わり、ちょっと休憩」


『ういー。んじゃ都のクエ済ませとくわ』


 マルチ難易度だけど、まぁ大丈夫だろ。鍬しか振れないが雅人はきっと無敵だ。そんな事よりとりあえずセラに返事するか。

 グールに関係するかは分からないけど、明らかに亜古宮さん案件だろうし。場所と亜古宮さんに伝えてるかは聞いとくかな。


 "場所はココ。廃ちゃんにはまだ伝えてない"


 その一言と一緒に、地図にピン立てしてある画像が一枚。

 セラが泊まってるホテルの付近か。

 この画像とさっきの卵の画像も合わせて亜古宮さんに一応報告しとくかな。一応セラに報告する事は伝えておくか。


 "任せた!"


 お前が直接グループに貼ってくれればいいんだけどね? と言うのは、今回はやめておこう。ついでに俺も雅人から聞いた話と動画貼っつけておきたいし。

 それにしてもセラが送ってくる画像、屋外では無いっぽいけど不法侵入とかしてないだろうな。ちょっと不安になってきた。


『フハハハ! 鍬の二本持ちが解禁されたぞぉ! 貴様も耕してやろう!』


 雅人が鍬でトリップしてやがる……。

 早く戻ってやらねぇと鍬の魔王になっちまう。


 "晴久! みてみて!"


 ゲームにそろそろ戻るかなと思っていた俺の元には、テンションの高さが伝わってくる一文と共に送られて来た画像。

 それはどっかに立てかけているのか、さっきよりも圧倒的にでかい卵と並んでご機嫌そうなセラの写真。

 ぱっと見でもセラより大きかったであろう卵はさっきと違って割れていて、中には何か入っていたであろう内側は少し変色しているようにも見える。


「割れてるってそういう事だよな? さっきの卵は多分まだ割れては無かった。これは流石にマズい気がしてきた。セラに撤退する様に言わんと何するか分からんぞ。このテンション」


 しかしそんな俺の心配を知らないセラから追撃で送られてきたものは、"誕☆生"とふざけきった一言と、その割れた卵の中央で両手をバンザイしてキメ顔のセラの写真。


「いや、マジ何やってんだ!?」





ブクマ、評価等々含め、お読みいただきありがとうございます。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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