勇者召喚の悲劇 その4
「魔王を打倒できるものをここへ呼び寄せ給えー!」
魔法陣が輝きを増し、空から一条の光が差し込んだ。
朧げな影が像を結び、ひとりの人物が浮かび上がる。
「「おおぉ! 成功だ!」」
見守っていた騎士や魔術師からどよめきが起こった。
人の像が完全に形を成したその瞬間、光が――溢れた。
さながら地上に出現した太陽のように、周囲を巻き込みながら広がっていく。音を置き去りにして進む光は、全てのものを等しく消し去っていく。
王都を飲み込み、街道を飲み込み、宿場町をいくつか飲み込んだ地上の太陽は、ようやく進むのを止めた。
そして後からドンッと音の壁が押し寄せてきた。
まさしく壁であった。
圧縮された空気は、何もかもを押し潰しながら進んでいく。
土、草、石、建物、そして人、圧縮されたそれらを取り込み、完全な壁となって音は進む。
地面を伝わる音は、壁の到来を告げる先触れ。地を割り、草木を跳ね上げ、音の壁は進む。
上空へ向かった音の壁は、跳ね上げられたものたちを、この星全体へと運んで行く。
風に乗って運ばれ、重力によって降り注ぐ。重いものは下へ、軽いものはふわりと上へ。
やがて星全体が覆われた。青々と輝いていた星は見る影もない。
陽の光は遮られ、地は割れ、水は煮立ち、空は穢れた。
地上の生き物は等しく滅んだ。人も動物も魔物も、そして魔王も。
しかし逞しい生命は生き続けている。
地中深くか海底か、それとも他のどこかか。
命は続いていく。
普通に考えると、10万kgくらいの質量がないと恐竜絶滅(の原因と考えられている)くらいのエネルギーにはなりませんが、まぁそこは魔術的ななんやかんやがあったんでしょう。