六話
有香の運転にて、特になんの妨害もなく、ホテルマサクラへと着いた美麗と、瑛太は有香から指定された部屋へ着いた。
「………まさか地上27階にある、このホテル最高級のスイートルームを貸してくれるなんて……」
全国にある、ホテルマサクラの本店とも言える、このホテル。27階建てで、一般人から少しリッチな人まで幅広い数の人が泊まれる値段設定となっており、下限は1泊1万5000円で、今回、瑛太達が借りたのは1泊だけで40万を超える値段となっている。
「とりあえず、明後日まではこの部屋に缶詰状態だから、何か作戦会議を――――っと」
2つあるベッドウチの一つに荷物を置いた瑛太。振り返った瞬間に、美麗に抱きつかれ、そのまま柔らかいベッドに押し倒された。
「どうした美れ――っ」
カプ、と美麗が瑛太の首筋にまるで吸血鬼のように歯を立てるが、甘噛みなので、瑛太自信には痛みなどはない。
ただ、ちょっと変な感じがするだけである。
「………美麗?」
「……………」
チュー、チューと音が聞こえるほどに首筋に強く吸い付く美麗。瑛太はただただ黙って美麗の頭を撫で続ける。
このサインは、美麗が嫉妬した時に起こる、瑛太は私のだもんサインで瑛太が他の女と喋っている時や、瑛太に対して好意的な視線を感じ取った美麗が瑛太に対してキスマークを付けるのだ。
(…………今日はいつもより長い)
ちゅーちゅーと頑張って首筋にキスマークをつけようとしている美麗にされるがままにされていると、約三分後に美麗の口が離れると、そのまま、こてんと胸元に頭を置いた。
「………どうした?美麗」
「………だって、有香さんが瑛太に色目使ってたもの。運転中ずっと」
「…………そうだったか?」
人の視線には敏感な方である瑛太は、特に何も感じなかったが、女だけに分かる謎のやつであろうか。
「そうよ!絶対に見てたもん!」
グリグリと甘える美麗。そこに、コンコンっとノックの音がすると、ガチャっと扉が開いた。
「瑛太さん、美麗さん。朝食の準備が―――――――」
やってきたのは、オーナーである正倉有香。ベッドに押し倒されている瑛太、そして、乗っかっている美麗を二、3度見てから――――。
「………こほん、失礼しました。ここに置いておくので、ごゆっくり。あぁ、別に、お2人がナニをしてようが、一切詮索しないので安心してください」
と、物凄い勢いで下がって行った。
「「………………」」
完璧になにやら誤解されてしまった二人。いや、別に誤解とかそう言うあれでは無いのだが、どうやら情事に耽る一歩手前だと思われたようだ。
「……さて、美麗。ご飯も届いたし、食べ―――んっ」
「んっ………ちゅ……」
身を起こそうとした瑛太をもう一度押し倒して、そのまま唇を奪う美麗。そして、そのまま瑛太の服を脱がそうとボタンを外していった。
「んっ………ふふ、そういえば、昨日はお預けでしたもんね……すっかり忘れていたわ」
「………………」
瑛太の頬から冷や汗が流れた。
「………ちょ、ちょっと待って美麗―――――」
「ふふっ………瑛太、乱れ狂いましょう」
この後、朝食を食べるのは二時間後だった。




