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二話

「……あぁ、遅くなったけど、その服似合ってるよ」


「ほんと?ありがとう」


 一度離れてからクルっ、と一回転する美麗。ピンク色のロングコートがこれまた美麗に似合っている。やはり俺の恋人は世界一可愛い。


「さっ、行きましょう瑛太。私たち二人の逃避行の始まりよ」


「あぁ。君となら、俺はどこにだって行けるよ」


「私も、あなたがいるなら地獄の果てでも桃源郷よ」


 美麗と瑛太は、手を繋ぐと、そのままするりと指を絡め合わせる。


「ねぇ、瑛太」


「うん?」


「あなたは、死がふたりをわかつまでという言葉を知っているかしら?」


 キリスト教カトリック宗派にて、結婚式で神父が結婚する夫婦へ向ける言葉である。


 人間には逆らうすべのない『死』以外に夫婦でなくなることを認めないという意味である。


「勿論、知っているさ」


「私達にはこの言葉がとても似合うわ……」


「……あぁ、そうだな」


 ギュッ、と絡め合う指どうしの力が強くなる。それは、どんなことがあろうが、この手は離さず、ずっと一緒にいるという意思が伝わってくる。


「ずっと一緒よ、瑛太……例え見つかっても、私は絶対に貴方と離れないわ」


「……こんなifは想像したくはないが、もし見つかったらどうする」


「そう……ね」


 うーん、と考え始める美麗。しばらくして、瑛太に笑顔を向けた。


「その時は、一緒に心中しましょうね♡」


「………………………」


 これまた、なんと見事な笑顔だった。勿論、瑛太は首を縦に振った。






「さて、これからの日程だけど……」


 現在、この街にあるちょっとムフフんな裏通り。表通りでは出せないような、ちょっと口に出すのもはばかれる様なことを主体にした店だったり、キャバクラだったり、いわゆるラブホテルなるものがある通りを目指している二人である。


「きっと、今頃家はてんやわんやしてるはずよ。逃げ出したと気づいたなら、まず駅に見張りを置くはずよ」


 逃げ出したのなら、すぐに遠くへ移動できる手段のある場所へ行く(多分)。電車の終電はまだまだなので、まず西条家が目を貼るのは駅であろうと予測した美麗は、裏をかいて、この街で一泊してから移動するという算段である。


「分かったーーーー美麗」


 向こう側から、パトロール中である警察官がやってきたのを目視した、瑛太は、美麗の手を引っ張り、いい感じに薄暗くて、狭い路地に美麗を引き込んだ。


「ど、どうしたの?」


「警察。だから、面倒事を避けるためにーーーーんっ」


「んむっ……ちゅ……」


 美麗を壁に押しやり、腰に手を回してから、瑛太は美麗の唇を奪う。美麗は、一瞬だけ目を見開かせ、驚いたが、すぐに状況を理解し、瑛太の首に両腕を回した。


「……ちっ、んだよ。リア充か……」


 警察はチラリと瑛太達の方を見たが、舌打ちをしてからすぐに通り過ぎた。


「………大丈夫そうだな。さ、美麗。さっさとーーー美麗?」


「……んんっ、ねぇ、瑛太……もっと、もっとキスしましょう?」


 頬を赤くして、何やらスイッチが入ってしまった美麗。瑛太の首から腕を離さず、ずっと「キスゥ……キスゥ……」と呟いている。


「……ったく、ホテルついたらいくらでもしてやるから……今は我慢な」


「……ぶー、瑛太のいけずー」


 ほっぺたに空気を入れて、分かりやすく拗ねていますアピールをするも、瑛太にとってはただただ可愛いだけだった。


 そして、駄々をこねる美麗を半ば引っ張りながらたどり着いたのは、やけに全体がピンク色の裏通りである。


「……うわぁ、こんなとこ長くいたら頭ピンク色になりそうだな……」


 鼻につく強い香水の匂いに、瑛太を顔を顰め、鼻を塞ぐ。その間に、美麗が忙しなく顔と目を動かして、ラブホの外観を見ながらどこに泊まるのかを査定していた。


「……………うん、ここにしましょう。瑛太」


「へーい」


 今度は瑛太がひっぱられる番だった。

 

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