最終話
最終回です
「……ぐっ」
瑛太は目が覚めた。背後よりスタンガンを当てられ気絶してから五時間ほど。ぼやける視界を何とか固定させると、目の前にいる人物に驚きが隠せなかった。
「………起きたか、瑛太」
「…………クソジジイ」
瑛太の目に殺意が宿る。いつもなら、五右衛門のことをごえ爺と呼んでいる瑛太だが、この時ばかりは口が悪くなった。
「………おい、クソジジイ。美麗はどこへやった」
「心配するな。瑛太よ。無事じゃよ」
ズズズ、と呑気に目の前でお茶を飲んでいる五右衛門に更に殺意が湧く。今すぐにこの目の前にいるクソジジイを殴り、拳に力を入れるが………
(……ち、拘束されてやがる)
腕は後ろに組まれ、縄で固定。足は拘束具で動けないようになっている。
(縄はほどけるが……流石に拘束具は無理………しゃあね、飛び道具で殺すか)
何故か瑛太の目の前には豪勢な料理が並んでいる。
「……おいクソジジイ。なんでこんなに豪勢な食事が並んでんだ?」
五右衛門に話しかけながら、力づくで縄を引きちぎる。返答いかんによっては、あのクソジジイの目にナイフとフォークが突き刺さることになる。
「そりゃあ突然だろう瑛太よ。せっかく我が孫娘の結婚相手が見つかのじゃから」
「………っ!ジジイ!!」
素早くナイフとフォークを持ち、間髪入れずに五右衛門の両目にナイフとフォークを投げた。
しかし、それはカタタン!と言う音を響かせ、五右衛門の顔の目の前に置かれた皿に阻まれた。
「………本田さんか」
「少し落ち着け瑛太」
「落ち着いていられると思うか!!」
大事な恋人を取られ、無理やり拘束されたと思ったら、こんな豪勢な食事が目の前に並んでいる。それも、その大事な恋人の望まぬ結婚のお祝いと言うのだから、物凄い皮肉である。
これで落ち着いていられる人間は絶対にいないだろう。
「………はぁ、五右衛門様。言葉足らずです……連れてきておいて良かった。お嬢様」
「瑛太っ!」
「……っ!美麗!?」
本田が半身ずらすと、後ろから瑛太の大事な恋人である西条美麗本人が、泣きながら瑛太の身に抱きついた。
「……全く、五右衛門様。お嬢様と同じで、瑛太も頭固いんですから、真実ははっきりと伝えるべきです………2時間前のお嬢様をお忘れで?」
「ぬ……ぬぅ……」
五右衛門が唸り声を上げ、本田が瑛太の足を拘束している拘束具の錠を外した。
「………どういうことですか?」
幾分冷静になった瑛太は、美麗を抱きしめながら本田に問うた。
「………これは所謂、西条家のしきたりなのだ。西条家の者と結婚するものは、一度はこの洗礼を受けるのだ」
「……………は?」
瑛太の頭が困惑した。
「つまり、試練なのだよ。瑛太。二人の愛がどれほど深いものなのかを調べる………な」
「……………な、な……………」
瑛太が口をパクパクと開閉した後―――――
「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
瑛太の大声が西条家の屋敷に響いた。
その後、婚約候補に上がっていた40代小太りおっさんが演技とはいえ、美麗のことを無礼な目で見たことを謝罪。瑛太に1発ぶん殴られるだけで済んだ、
祖父の決定で無理やり婚約させられそうになった幼馴染社長令嬢との、短い駆け落ち生活を送った瑛太。それは、まさか西条家が仕組んだことであり、全ては二人の愛を確かめるためのものだった。
その後、美麗と幸せに暮らしたそうな…………。
おわりんこ。
ということで、最終回でした。
前もこの話書こうとして挫折しましたが、こうして何ヶ月後に完結させることが出来ました。ありがとうございました。
最後に、この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係がありません!
なので!しきたりとかも変にツッコミ入れないでください!よろしくお願いします!!
それでは、こんな駄文をここまで読んでくださり、ありがとうございました!!




