プロローグ
大体10話を予定してます。
「逃げるわよ、瑛太」
放課後、夕日が教室の窓辺に座っている学生二人を照らす。片方は黒髪のごくごく普通の日本男子学生。片方は金髪の美少女学生である。
女子の方の名前は、西条美麗といい、日本でも有数の大企業グループ、西条グループを牛耳っている者の孫にあたる者だ。
そして、その目の前にいるのは、そんな彼女と唯一対等に話せる幼馴染兼恋人である柳原瑛太である。ごくごく普通の一般家庭に生まれたが、ひょんなことから、美麗と知り合い、かれこれ15年近く経っている。
幼少の頃から、美麗のガーディアンとして西条家から中々特殊な訓練を受けている瑛太。柔道から空手まで、護衛に役立つ技術は全て、美麗の父親から叩き込まれている。
「………駆け落ちか?」
「そうね。いやよ、私、瑛太以外と添い遂げる気なんてないもの」
むっすぅー、と分かりやすく頬を膨らませる美麗。こうなっている原因は、彼女の祖父である西条五右衛門が、強引に決めさせようとする婚約のせいであった。
「西条グループをより強固とするために、他の大企業グループの奴と結婚……?しかも、40過ぎのおっさんなんて……ふざけるんじゃないわよ!!」
ドンッ!と机を思いっきり叩いた美麗。
「~~~っ!」
どうやら痛かったらしく、目尻に少し涙が浮かんだ。瑛太が優しく美麗の手をさすった。
「とにかく!逃げるわよ!瑛太!」
「分かった………俺だって、美麗の恋人なんだ……見ず知らずのおっさんになんて美麗を渡して溜まるかよ…………」
瑛太の心からふつふつ、と怒りの気持ちが湧いてくる。できることなら五右衛門をぶん殴りたいが、立場上難しいので、仕方なくその気持ちを押さえ込んだ。
「逃げましょう、瑛太。二人で、どこか邪魔されない所へ」
「あぁ」
ぎゅ、と手を握り会う。
こうして、二人の無謀な逃避行が始まるのだった。