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ヒソヒソ
第一王子の十回目の誕生日パーティー兼舞踏会の最中僕はずっと壁に寄りかかりながら周囲の音に耳を澄ませる。
ヒソヒソ
(ほら、あれが例の悪魔の子よ。なんて醜い姿なのかしら)
(王様もあんなの処理しちゃえばいいのに)
(その悪魔の子と違って第一王子様凛々しくていかにも王族ってオーラがありますね。たった歳一つしか違わないのに)
煌びやかなドレスを身に纏ったいかにもな貴族の女性が
口元を扇子で隠しながら僕の悪口を言う。
そんな大きな声で言うなら口元は隠す必要はないだろうに。
ヒソヒソ
周りの人間が僕のことを嘲笑うのが聞こえる。
僕はなにもしてないのになんで。
こんなのおかしいじゃないか。
僕はこの国の王子なのに、誰からも愛されていない。
身の回りの世話をするメイドは世話をする時には手袋をして世話が終わるとその手袋を僕に見せつけるように捨てる。
兄弟には悪魔の子と言われて剣術の稽古では降参したのに
執拗に殴りつけてくるのにはもう慣れた。
王である父上は僕の存在は知っているはずなのに
まるでいないかのように扱う。
他の王族には専属の使用人がいるのに僕にはいない。
なんで。
ーーーーーー
いよいよこのくだらないパーティーも終わりに近づいてきた。
ヒソヒソ
(みて。王族なのにパーティーで孤立してるわ。ほんとに哀れな子。もし私があんな容姿であれば自殺してるだろうに。
僕のことを蔑ろにする貴族の女も、兄たちも、メイドも
父もみんな死んでしまえばいいのに。
頭に浮かんだ醜い言葉はまるでそこが元の居場所だったかのようにすんなりと馴染んでいくのが解った。
それと同時に酷い自己嫌悪に塗れた。
僕はこんなに醜いことを考えているのか。
それではここにいる建前と言う仮面を被った
クソみたいな女、男どもとなにも変わらないじゃないかと。
もうこれ以上自分を嫌いになりたくないから考えるのをやめようと考えた時。
パリィーン
ガラスが割れる音がホールに響いた。