はじめまして、最初のマドンナ
※この小説はフィクションです。
実在するの人物や団体などとは関係ありません。
冬の凍てつく寒さの中空を見上げ
「俺の人生毎回こんなだよな…」悠稀は呟いた。
悠稀の壮絶な人生の始まりと言ってもいい初恋は、小学校だった。
日向という学年のマドンナ的存在に心を奪われたのだ。出会いは小学校、これ程にも犬猿の仲という言葉が似合う2人がいるのかと考えるくらいに仲が悪かった。何があったわけでもない、校庭で目が合うだけで喧嘩をし、石を投げ合う。そんな毎日だった。でも、それがいつの日か惹かれてしまい恋心に変わっていた。マゾなのだろう。そう思われても仕方がない。しかし、その行き場の無い恋心を抱きながら卒業をしてしまう。
春休みに入り数週間経った頃、親友の道仲から電話がかかってきた。
「4月1日お前と日向付き合えるように遊びセッティングしておいたから絶対来いよ」それだけを残して、強制的に電話が切られた。
当日、味わったことのないほどの緊張感に戸惑いながら、気合いを入れて戦へと向かう。そこでは遊びという名の名前を借りた告白特設ステージとなっており、周りからの圧に押され、準備しきれない気持ちのまま告白をした。
「こんな私で良ければお願いします」あれ?プロポーズしたっけ?中学生になる段階で結婚でもするのでは?と思う程のしっかりとした返事をもらい、交際がスタートした。
付き合ったというものの、これと言って何が変わる訳ではない。初めての彼女ができた。ただ、その言葉だけで胸が踊った。
中学に入学し数ヶ月、2人ともテニス部に入部し友達もでき充実した日を送っていたが、すれ違ったときはアイコンタクトを取りつつも、お互い恥じらいがあり会話ができない期間が続いた。中学生というもの話したりしてデレデレした暁には、周囲からからかわれて面倒な思いをするものである。
と、まぁ、こんな日々を送っていたというのは前置きで…。断片的に出来事だけを話して時間を進めるとする。
中学2年に上がる前にやっと下の名前で呼べるようになり、周りに見られながらファーストキスという地獄を経験。その後は割と順調で夏祭りや、デートを重ねて幸せに満ち溢れていた。中学3年で卒業近くになってくると行動は大胆になり、何とは言わない。挿入とまではいかなくとも口や手でという関係も持ってしまった。
中学生の時間を全て捧げ、同じ高校には進学できなかったものの別々の学校で思い合っていると思っていた。
しかし前触れもなく事件は起きた。
日向の学校の文化祭に、中学の親友 真斗 を連れてサプライズで顔を出した時だった。日向はダンス部に所属していて相変わらずのマドンナ感を出しながら周囲の注目を集めていた。ダンスが終わり、こちらに気がつくと駆け寄ってきて
「え!嘘みたい。嬉しい!来てくれたんだ」
そう言って笑顔になり、サプライズは成功した。
「一緒に回らなくてごめんね…準備あるからまた後でね!」
元気に言い残してその場を後にした。
真斗と校内をぶらぶらし、その後昼食を食べようと近くのファストフード店に入り食事をしていると、真斗がいきなり
「あんなに可愛いと、浮気しててもおかしくないな」
と言ってくるのである。日向は周囲から見ると真面目で人のことは裏切ろうにも裏切らない子なので、
「そんなことあったら女なんて信用できなくなるよ」
なんて笑って他愛もない会話を続けた。
帰りは真斗は自転車、自分は電車だったので自然を装い日向を待つことにした。数十分経って学生集団が少しずつ駅に向かってくる。その中に日向もいて、気がつくと笑顔で駆け寄ってきて
「待っててくれたの?!嬉しい…一緒に帰ろ!」
曇りのない満面の笑みで笑いかけてくれた。
電車内は思った程人がいなかったが、2人ドアの前に立ち、黄昏ながら車窓を眺めていた。そんな時だった。普段のノリで日向が
「悠稀の携帯みーせてっ」
なんてことを言ってきた。
特に見せない理由も見当たらないので、素直に渡した。自分だけ何もしないというのもつまらないので、
「じゃあ、俺も日向の見ちゃおうかな?」
なんてふざけて言ったら案外素直に渡してくれて、特に見るものもないが、漁っていた。
お互いの携帯にはお互いの指紋が登録されていて見ようと思えば簡単に開けられた。
携帯を開くと丁度SNSでのトークが開かれていて、見てはいけないと思いながら、少しスクロールしてみたり、そんなことをしていた。
そんな時だった、
「今日の涼太すごくかっこよかったよ!」
そんなトークが目に入ってしまった。相手からのメッセージは来ていない。日向も自分の携帯でSNSを見ている。バレないように画面をタップし上へ上へスクロールをした。
「今日の朝は恥ずかしかったな…でも幸せだった!」
「一緒にいると怪しまれるから先教室入ってて?」
これは、?
冗談半分で見たつもりだったのに思わぬ展開に動揺を隠せず、丁度着いた降りる駅で、同様を必死に隠しながら
「ごめん!今日この後用事あった…先帰るね!」
走って逃げた。走ってる時はよく覚えていない。ただ溢れてくる涙を誰にもバレないように隠し、小道に逃げ込んだ。やはり不自然だったのだろう。自転車に乗った日向が追いかけてきた。
「悠稀どうしたの…?何があったの?」
いや、原因はお前だ。そう思っていても伝えられず、平然を装って
「日向さ、何か隠してることない?あるなら教えて?」
勇気を出して聞いてみた。だが、
「え?何もないよ?あったら言ってるもん!」
とぼけられたのだ。
「あ、いや、ないならいいんだけどさ。勘違いしてたみたい!ごめんね。日向のトークで涼太って人と何かあった感じだったからさ(笑)」
そう言った瞬間、日向の顔が引きつるのがわかった。
「あ、それね…。言おうと思ってたんだけど。」
いや、あるのかよ。今さっき無いって言ってたばかりなのに、自分もとんでもないサプライズをもらった。
「何があったのか教えて?」 そう自分がいうと
『ハグされた…』と答えた。
「色々他にもあったみたいだけど全部聞かせて?」
『朝少し会ってた』
「それだけ?」
『チューされた。』
しっかり浮気をしていたようだ。それ以上は聞いても出てこず、あの時の自分はおかしかった。またよりを戻してくれという要望ばかりだった。
流石に別れた。
別れた後も連絡は来た。自分も少し悪い気がしてしまい会ったこともあった。
全て相手のせいではないが、こんな感じで悠稀の壮絶な恋愛物語の幕が上がった。