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異世界で過ごす休暇の為に  作者: ますかぁっと
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武闘派の魔術師

もうもうと立ち込める砂煙。


その様相を見て、ケンラはただ立っていた。



「お、おい…ガル。なんか今さ…、ミシェーラが降ってこなかったか?。」



そう、今しがた起ったこの爆発は火薬とか魔術とか…そんなものじゃなくて高速でミシェーラが地面に墜落した衝撃としか思えない…。



(????。こいつら何があったんだ?。)



「以前先生が放った技を再現してみたんです!!。僕達では高度を上げる術式とそこから直下へ強襲する術式を同時に扱えないので…。僕とミシェーラで役割を分担しました!。」



得意げに話すガル。


戦闘において魔術は利点しかない。



しかし、如何様な魔術で有ろうと魔力で成り立っている。


魔力はより高い密度で魔力を保持する生物や同じく魔力による妨害等障害が多い。



なので魔術を修めた者でも相手を確実に仕留めるには…やはり物理的に相手の体を欠損させることが望ましい。



とはいえ…


「ま、まあ。確かに俺もしてたし…魔術があるからこその技だけども……これはどちらかと言えば『武術』だろ?…。お前ら魔術師の弟子なのにこれを練習してどうすだよ。」



そう、叩いて壊すのはただの武術家だ。


一応俺達は武闘派とも言えなくは無いが……とゆうか俺とミシェーラに関しては身体能力を上げて普通に体術で戦っているから正に武術家とも言える。



「………た、確かに……。いつの間にか僕達も戦闘狂になっていたようです……。」



まあ、魔術師なんて技術士か研究者か戦闘者の3択なのだからダメでは無いが。



新しい魔術で敵を倒すのでは無く、今の自分達の手札で最大の物理ダメージを出そうとするのは…もはや武人だ。



なんてたわいも無い考えを巡らせたいたら土煙の中からミシェーラがすっ飛んできた。


そのまま壁に衝突。剥がれ落ちるように路地に倒れ、血を吐く。



「ミシェーラ!!、大丈夫か!!。」


すぐさまガルが駆け付ける。


だが俺は残らなければならない。何も無いところからミシェーラはすっ飛んで来ない。



「…しぶといやつだな。大人しく寝とけよ。」



「……そうだな…、あと少しで永眠する所だった……。」



煙のが晴れ、腹部を押さえたケイオスが出てくる。



「お前ら…ここが王都だと分かってるのか?。そこらじゅうボロボロだぞ…。」



「確かにそうね。でも周辺住民の避難なら完了したわよ。あなたの捕縛と無力化の許可もね。」



そう答えたのはアンナだった。


ジャックが戦闘を始めた時からアンナには避難とケイオスとの戦闘許可を取りに行って貰っていたのだ。



「……まあ、確かにこれは酷いとは思うけどね……。」



壁はヒビだらけ、路地は吹き飛び、そこかしこに穴が空いている。


さながら戦場のようだ。だが戦場でしか戦ったことの無いケンラとその弟子達に『物を壊すな』というのは難しい事だった。



とはいえは人命を意識していたのは確か。


「やっと本番だな。ガルはミシェーラを見ていろ、アンナは俺と一緒に勘違いイヌ賢者野郎をシバくぞ。」



「うん。……なんか久しぶりに一緒に戦うね!。」



嬉しそうに剣を引き抜くアンナ。

そのまま長く、深い呼吸を数度行う。


体内に魔力を取り込み、濃縮と蓄積を繰り返すことで一時的に細胞を魔力で強化……魔獣化をする。



最初に仕掛けたのはアンナだった。



その爆発的な瞬発力でケイオスとの距離を一気に詰める。


魔獣化したアンナの瞬発力は魔術で身体能力を強化したケンラと並ぶ、或いは超えうる。



ケイオスの手前まで来た時、左足の着地の際にスピードを殺さず…それでいて体を地面に縫い止める絶妙な力加減の踏み込みをする。


そのまま慣性に乗って体を前に、右足を地につけた際にひいていた右手を一気に伸ばし、ケイオスの顔面に速度を全て乗せた突きを放つ。



アンナの使うシャフール剣術、その中で瞬突剣(シパイア)と呼ばれる剣技だ。



俊足から生み出される瞬速の突き…。


突きを繰り出すその瞬間まで何処を狙っているか悟られないアンナの技量…。



この2つが合わさる事で瞬突剣(シパイア)の回避は非常に困難なものとなる。



「ぉっと、危ない危ない。」


「…チッ。」



だが…いや、やはりケイオスはそれを上半身のみ動かす事で難なく回避して見せた。



容姿が人狼とゆうことは身体能力に関しても動物性が高まっていることを示している。


それも狼。俊敏性や反射神経等は特に伸びている可能性が高い。



…だが、熟達した者にとって初撃は捌かれて当然な節がある。アンナもそれは理解していた。



上を向いていた手の甲を下に向けながら、剣を握る手を左の腰近くまで引く。



ケイオスを大きく超えた切っ先を戻す…次の攻撃への予備動作であり、ケイオスの切りつける攻撃でもある。



ケイオスは油断から上半身を逸らし一撃目を避けた。


それが仇となり、回避は出来たものの倒れ込むように四肢を地に付ける。



(チャンス!!。)


人間は2足歩行の生き物だ。四肢が地に着いた状態では本来の瞬発力を発揮できない。



腰まで引いた剣。体と同じ方向に向けていた切っ先を手首を回すことで後ろに向けながら上へ振り抜く。


地に伏したケイオスの首を下から跳ね上げる一撃……



(…っっ!!)


悪寒がした。背中を不快な何かで撫でられたような…。得体の知れない恐怖……。



目が合ったのだ、ケイオスと……。


直後…首の寸前まで刃が迫っていた時…、




ケイオスが『跳ねた』。



両腕の力で体を上へ打ち上げたのだ。


アンナの振る刃よりも『速く』。



そのまま急速に持ち上がる上半身、ほぼ直立に近い所まで持ち上がっとき、次は軽く両足でジャンプをする。



そのまま中空でバク転のようなアクロバットを決め…



体が丁度真上を向いた時、左足を軸に腰をひねることで……。



「…っん?!?!。」


アンナと頭頂部に右つま先を打ち込んだ。


頭部への強烈な衝撃…、揺さぶられた脳が一時的に機能を落とし、力なく倒れる。



起動・光撃(ギーヴ・レイ)っ!!!。」


すかさず光撃を撃ち込むケンラ。ケイオスの前に晒されたアンナの隙をカバーする。



「……あ、りがとう。もう大丈夫。」


「無理そうなら引けよ。死なれたら困る。」



今のケイオスに近接戦は危険かもしれない。アンナの剣技には信頼を置いているが夜刻とつるんでる賢者なんて得体が知れなさすぎる。



「大丈夫…、もっと気合い入れるから。」


そういうと先程よりも深い呼吸を始めるアンナ。


さらにます熱量。より強力な人のような『何か』へ近づく。



「おいおい、マジで自我無くして暴れたりするなよ。」


「……まだ、……大丈夫だから…。」


体組織の変異を促す…魔獣化。


筋肉や骨格を変異させれば人間を遥かに凌駕する身体能力が得られる……が、当然その筋骨を動かす脳や神経も変異させなければいけない。


脳の魔獣化が進めば攻撃性が高まり、理性が薄れていく。


本来は魔術でこの精神面の補強を並行して行うのだが…アンナはこれが苦手なのだ。



だが魔力に干渉する才能は有る…。例えるなら運動音痴の巨人…、圧倒的なスペックはあれど、それを制御する術が甘いのだ。




「親のコネで騎士団長を務めるガキが…調子に乗るなよ…、猟皇権限・(ヤグフベード・)不貫爪牙(ケンロッホ)。」



アンナが再び俊足からの瞬突剣を放つ。


スピードが更にました瞬突剣は威力も遥かに上がっている。



だが…、



ゴッッ!!!……。


「そ、そんなっ!!。」



放たれた切っ先はケイオスの黒い前腕で塞がれた…。


その切っ先が『刺さる事すら無く』。



「雑魚の爪牙で負傷するなど…猟皇の姿ではあってはならないと言う事だっ!!。」



…アンナの瞬突剣が効かない…。


これはアンナのほぼ全ての斬撃がケイオスには効かないことを意味する。



…やはり俺がやるしか……。



「所詮、お前は家の名と親のコネに縋るしか無い哀れな女とゆう事だ!!。貴族の娘などは政治の道具にしかならんと言うのに、夢を見すぎだ。」



「っ?!………、そんな事わ、」

「邪魔だアンナ、起動・極化多光撃(ギーヴ・テラレイン)。」



放たれる14射の光撃。


直前に響いたケンラの声に、反射的に射線を空けるアンナ。


しかし、今度のケイオスはその俊足で14射全てを避ける。



「…ケ、ケンラ……。ごめん…、やっぱり弱い私じゃケンラを助けるなんて出来ないんだよね……。」


珍しくしおらしい態度を取るアンナ。まあ、実際に思い当たる所があったのだろう…。



正直言ってめんどくさい。だがいつまでもケイオスとの間に立っていられると邪魔で仕方が無い。



「おい…アンナ……、いつの時代でも賢者は勇者を助けてきたもんだろ?。俺とゆう賢者に助けて貰える勇者になりたくないなら………今すぐそこを退け。」



よしよし、騎士志願のアンナなら今すぐ退くだろう。そもそもこんな臭いセリフをまとも捉える奴…居るわけが…



「……うん…そうだね!!。私は騎士を目指していたけど…本当にしたかった事は人助け…つまり勇者だったんだ!!!!。」



………ん?。



「決めた……。ケンラを支える騎士になるまでは…、ケンラに支えてもらう勇者になる!!。」



……え?…、そんな簡単に決意する事なの?勇者って?……。



「だから……ケンラ……。そ、そのぉ……。いつかあなたを支えれる様になる時までは……。助けてくれる?、……よね?。」



少し顔を赤らめて……まるで愛の告白(実際その気もある)をするかのように言い放つアンナ………。


「い、いや!。そんな簡単に決めるものじゃないだろ勇者って!!。てかお前どうやってケイオスと戦うんだよ!!、斬撃が効かないんじゃ戦え、」



「…ん?…、効きますよ??。」



ブスリ……。



「ギャァアッッ!!!!。」



ジャックだった。


ケイオスの背後にいつの間にかジャックが立っていた。しかもその状態から普通にナイフをケイオスの腰あたりに突き刺している。



「どぉけえっ!!。」


振るわれる腕、それを大袈裟な動きで後ろに飛び退き回避する。



「おそらく刃が通らないのは前腕だけでしょう。他は普通に切れるかと。」



「クソッ。影が薄いだけの雑魚が……。」



…なるほど、猟皇の権能を付与されているとはいえケイオス自体は夜刻の2…ガァルゴードでは無い。


つまり奴の使う猟皇権限は不完全…その効果も限定的とゆうことか……。



「お手柄だよ!!、ジャック!。それなら私でも十分戦える……。」



再びやる気に火がついたアンナ…。恐らくジャックも加勢してくれるだろう……。



「大人しく降伏しろよケイオス!!!。もうお前の負けだよ!!。」



楽勝の2文字がデカデカと頭の中に浮かぶケンラ。これはもう勝ち確だ。




「はぁ……、そんな露骨に嬉しそうにするなよ……全く。」

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