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異世界で過ごす休暇の為に  作者: ますかぁっと
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猟皇の犬

魔術師・ケイオスは『駆け出した』。



ケイオスは思い出す。猟皇ガァルゴォードは初めて会った時、己の事を『追い詰め、痛めつけ、殺し貪る者』だと言っていた。



「クソ、私は魔術師だと言うのに……、この上ない屈辱だ!!。」



「だったら永遠に棒立ちしてろよっ!!。」



ケンラは走る。幼い頃の彼が魔術の実験台にしたいたのは森の中にいた危険な野生動物や魔獣だ。


起伏のある森の中、逃げる標的を追い掛けたり…逆に追い掛けられたり。


要するに魔術師でありながら体を動かす事に抵抗が無い…むしろ体力も魔術師として必要な資格だと考えている。




そんな体を魔術で強化したケンラは…市街ではまさに縦横無尽に動き回る。



ただ路地を掛けるだけでも十二分な速さ。


その上壁を蹴り上げ屋根の上にまで登ったり、勢いをつければ10m程の跳躍すら出来る。



「おい!まじでふざけんなよ!!。近寄んじゃねぇよ!!。」



しかしケイオスを振り切れない。


直線での速さはもはやケイオスの方が上。


その分曲がり角や屋根に登る等はぎこち無く、そこを多用する事で何とか距離を保てている危うい状態だ。



「あぁっ!!もどかしい!!。なぜ飛ぶことは制限出来て他は出来ないんだ!!。」



「んん?。飛んでいたら捕まえにくいだろぉ?。それに狩りは獲物を追い詰めるのが1番楽しい、…ワンッ!!。」



ケンラは心の中で安堵する。


(助かった…、魔術の無力化が出来るならこんな逃走無意味だと思っていたが…。ケイオスには出来なさそうだな。)



飛翔の魔術が機能を失った。つまり猟皇はどれ程までかは分からないが無条件に魔術を無力化出来るということだ。



もしそれに身体強化の魔術も含まれていればおしまいだった。



「先生っ!こちらへっ!!。」


「ガル!!。何やってんだ逃げろっ!!。」



比較的高い家屋が並ぶ通りに出てしまい、曲がる場所を探そうとした時、その通りには1番弟子であるガルが立っていた。


しかし、止まる事も出来ないのでそのままガルの元へ…。



「任せてください先生!!。『大技』見せちゃいますから!!!。」



何故か自信満々なガル。



そんなこと言っても彼が得意とするのは風属性の魔術だ。


センスや才能はあるが適正があったのが殺傷力が極めて低い風属性の彼が一体何をしてケイオスを止めるのだ?。




とか考える暇もなくケイオスは俺の後ろにつき、



ガルの元へ向かう俺との距離を詰めてくる……。



ガルに気を取られてしまい逃げるルートも考えてない……。



そうならば信じるしかない…一番弟子の言葉を!!。



「それなら取り敢えずやってくれぇぇえッッッ!!!。」



目を閉じるガル。そして再び開かれた翡翠色の目でケイオスを睨む。



彼の祖先が精霊から力を分けてもらった際に目の視力をいくらか奪われたそうだ。


それから魔術の才能を持つ子供は度々生まれるがその全員が片目の視力が低いらしい。元からそうゆう遺伝の血筋だと俺は思っているが。



何故なら…少なくとも彼の力強い目が周りの者に劣っている様にはとても思えないからだ。



召喚・再現(サモン・リゲイン)………、」



大気が揺れた気がした。


ふわりと…シナモンの甘い香りを漂わせながら…


両手を下げた状態のガル、

そこから右手を勢いよく振り上げ叫ぶ…



穂先を(シュピア)持ち上げる(・テュピィッツァ)ッッッ!!。」



ケイオスの足元に突如として魔法陣が現れる…


その瞬間、例えるなら高い所から水に飛び込んだ時のような…



普段は固いとすら思わないものが…圧倒的な威力でぶつかったせいで『固く』感じてしまう…そんな感じだった。



そう、それはそんな威力の暴風だった。



だがなぜ風が吹くのだろうか?


魔術で空気を動かしたからか?確かにそれもある。だが今回は違った。



何故なら後ろにいたケイオスが『居なくなっていたからだ』。



暴風を巻き起こしたのではない。暴風が巻き『起った』のだ。


ケイオスを吹き飛ばす程の爆風を生み出し。そのせいで一瞬にして気圧が低くなった場所に周りの空気が流れ込んできたのだ。



「やった!!成功した!!。先生、『穂先は持ち上がりましたよ』!!!。」





遠く空の上…飛ぶことは禁止されたが風に煽られ浮くのは仕方ない。


「やれやれ、小賢しい時間稼ぎを……。」



ケイオス(標的)は身動きの取れない空中に浮いていた。



だがケイオスは気づいていなかった、己を『穿つ』穂先は既に持ち上げられていた事に。



ここまで来れば次は簡単だ。


持ち上げてしまえばあとは……



起動・身体昇華(ギーヴ・グレンディア)っ!!、起動・直下加速(ギーヴ・エグゼダイブ)っっ!!!!。」



ケイオスの遥上空。


そこには美しい穂先…ケンラの2番弟子であるミシェーラが居た。



「絶技っ!!!、そして振り下ろす(オブシュリガァータ)ッッッ!!!!」




2つの術式が発動する。


体組織の強靭性、瞬発力…あらゆる身体能力を向上させる身体昇華。


下方向へ絶大な加速度を得る重力術の直下加速…。



そして更に『もう1つ』。



起動・(ギーヴ・)下降気流(ダウンバースト)っ!!!!。」



遥か下からガルが強烈な下降気流を発生させる術式を発動させる。




重力、魔術、そして強烈な下降気流。


3重の加速を得たミシェーラは術式によって発光したままケイオスとの距離を正しく一瞬で詰める。


当然、詰めた後は……



「…んがァっ!。」



衝突…ケイオスも下方へ落ちてはいるがそれを圧倒的に上回るスピードのミシェーラが当たればダメージを負う。


だがまだだ。衝突してなおミシェーラの加速は止まらず、その右足の先にケイオスの胴体を縫い止めている。



そしてその終わりは当然…ガルがケイオスを巻き上げた路地の地面………




ズンッツ!!!



空高くから光の残像を残したミシェーラが、着地する…路地と足の間にケイオスを挟んで…。


その衝撃は凄まじく路地はひび割れ、そこにケイオスが埋まり、



ゴッォォォオオオオオオッッッ!!!!!!!



その衝撃は爆風に変わり、ひび割れたレンガを巻き上げ、吹き飛ばし…瓦礫に変え、




辺りを砂塵で多いつくした。




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