色違いの犯罪者
仕事休みになれば1日に1万字ペースで書けるんですけど……。
「…ん?…、やっと出てきましたか…。」
店の前で待機すること1時間程。黒いローブに身を包んだ男…ケイオスが店から出てくる。
時刻は23時程か…まばらだった人影がほぼゼロになり。見回りの騎士とチラホラ見える。
そんな中ケイオスに近づく騎士が1人…。
暗くてよく見えないがかなりガタイのいい男だ。
その男とケイオスが会話を始める。かと思えばすぐさま歩き出した。
「いよいよか…。私が言うのもあれだが然るべき罰を受けてもらおう。」
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尾行を始めて30分程……
ジャックは驚愕していた。
ケイオスが尾行を続けているとその街並みはここでは殆どない『見た事のある景色』になって行ったのだ。
ケイオスと1人の騎士は王都をぐるりと囲む長大な城壁間際、王都の外周部にまでやってきていた。
城壁の内部は限られている。しかし、王都内に家屋を所持する場合、他の都市よりも多額の税金を納める必要があるので新しく移住してくるものは意外と少ない。
なので、商人や職人が店を構える中央はともかく。外周部は意外と人の密度が薄い。
ジャックが寝床を借りる、孤児院となった教会もそんな外周部にあった。
………とゆうより、ケイオスを付けて辿り着いた先そのものが……、
この世界に来てから初めてジャックへと手を差し伸べてくれた女性…キエラの営む孤児院だった……。
辺りを見渡せば路地に潜む者達が見える。
それは教会の周りの通りを塞ぐように……。
(間違いない。今夜の標的は『キエラ』と『子供達』……。)
確かに教会は比較的広い敷地を持っており、周りの家々との距離もある。より人の密度が来い内側よりも遥かに犯行を行いやすいだろう…。
ケイオスが教会の入口に近づく…。
ケイオスとその部下達による犯行を確実に証明するため…。
アンナは犯行を『行わせる』事に同意した。
しかし、出来うる限り被害者達を救う事を誓わせられた。
私達や被害者の声だけでない…確たる証拠が有れば即、止めろと……。
キエラは出会ってまだほんの数日しか経っていない女性だ。
別に恋愛視している訳でもない…。
だがどうだろうか。そのキエラと、あまり好きではないがキエラが大切に育てている子供達がむざむざと殺されるのを見て…
(私はそれを後悔せずにいられるのだろうか?。)
ここはロンドンでは無い。そもそも地球では無い。
一応ケンラとゆう賢者に頼めば地球に戻ればするが…100年を超える歳月は、きっと私の知るロンドンを大きく変えているだろう。
そもそもロンドンでの私はただの殺人鬼だ。あこいる男と大差の無い。そんな私が戻って何になる?。
ここでは私を知らない者ばかりだ。それはやり直せるとゆう事でもある。
ケイオスが教会の…少しさびつき始めてしまったノブに手を伸ばす。
扉を開けば、次にその手が伸びるのはキエラ…そして子供達…
そしてことが済めば皆、内蔵を無惨に引き出されるのだ。
ふと燕尾服の懐…その部分の裏地をなぞる。
キエラは魔法の糸で特別な魔法陣を縫ったと言っていた。
初日に…汚れてしまった燕尾服を洗ってもらった際に縫ったのだとか。
「こんな服…シワにならないように洗濯するのも一苦労だと言うのに…。本当に、彼女は与える事が得意な女性だ…。」
意識を指先に集中する。
どうやらこの世界には超常の力…魔法があるらしい。
人がそれを扱えるようにしたのを魔術、それを扱う者を魔術師と言うのだとか。
キエラが縫ってくれたのもその1つ。本来は声で魔術の式を発声しないと発現しない魔術の式を発声する部分を簡略化・高速化するものらしい。
ただ、扱いがかなり難しく…望んだものを綺麗な形で取り出せる者は殆ど居ないとか、彼女自身もお守り程度にしか考えていなかったようだ。
本当に…、本当に優しい女性だ。お守りだと済ませる労力では無いのだろうに…。
「…はぁ…。久しぶりに…人を『殺したい』ですね。」
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「おや?、先程の方ではありませんか。どうしましたか?。」
ケイオスがノブに手を掛けた時。
背後から声がかけられる。
「あぁ、先程の…。貴方は何しにこちらへ?。」
辺りに潜んでいた見張り達がソワソワし始める。
自分達の警戒網を擦り付けて侵入した男が居るのだから無理もないが。
(あいつら…寝てたんじゃないか?全く。)
「この教会、私の知り合いが住んでいるのですよ。最近は物騒なので会いに来たのです。貴方は何故ここに?。」
空気が凍りつく。
ケイオスとジャック。共にはち切れんばかりの笑みを浮かべおり、唯一ケイオスに付き添っている男も体に似合わない笑顔を作っている。
「私たちは見回りですよ。こういった大きな建物は犯罪者が集まることが多いので。ですが暮らしている人が居るなら安心ですね。それではまた。」
ドアノブから手を離し、ジャックの横を通り抜け去ろうとするケイオス。
この後は次のターゲットに向かうのだろうか?。
これでキエラ達は守られた…。
(いや、この街で私を知っている者は居ないのだった。)
「あぁ!、貴方に伝えてたかった事があったのでした!……ケイオス『局長』。」
「っ?!……。」
ケイオスは気づいた。
別にケイオスの名を知っていることも、ケイオスが魔術統制局の局長だと知っていることも不思議ではない。むしろこの街では知らないものの方が少ない。
問題はあった際にその知っているとゆう事を『隠して』いた事だ。
仮にこの情報だけで色分けするならば…こいつは限りなく黒…
「それはそれは…一体なんでしょうか?。」
「いえいえ、謝罪ですよ。『やりづらく』してしまった事と、『3人を殺して』しまったことの。」
この瞬間、2人は明確な敵となった。