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異世界で過ごす休暇の為に  作者: ますかぁっと
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国家魔術統制局 局長

「局長、アルケイシス国立学院が教員の派遣を要請しているのですが。」


「教員の数を増やすのではなく、生徒の数を減らせと伝えておけ。…魔術とはひらかれたものではないんだとな。」



怪訝な顔で椅子にふんぞり返っている男…ケイオスが多くは無いが少なくもない己の仕事を片付けている。



「そもそも、あれは国立なんて書いてはいるが…実際は1部貴族の出資とゴリ押しで建てられた物だろう?。経営権だって奴らに売却されているも同然。そんなものに我々が協力する義理は無い。」



オーフェシアでは教育機関の経営は国立以外でも行える。


だがそのカリキュラムに軍事性の高い物…例えば『魔術』等が含まれていれば話は別だ。



元来、魔術は師から弟子へ伝えていく物。それを戦争や魔族との抗争によって人員不足の恐れがあると学校教育のような形で行っているのが現状だ。



なので卒業後の進路や総数の把握などを厳重に管理し、国家への寄与性を高める為に魔術の習得が出来る学園は全て国立となっている。



しかし、アルケイシス国立学院は少々事情が違う。


以前、夜刻の19が王都を襲来した際。1部の有力な貴族が魔術師の人数を増やすべきだと主張し、1部の魔術の大家が国立の魔術教育に対して関与したいと言い出した。



そのガス抜きの為に1つの『国立』学院が誕生した。


学院の経営権は毎年寄付として資本を提供する貴族達に委任され、その貴族達はある程度の管理はあれど国家の拘束が緩い環境で生徒達に魔術を教えれる環境を整えたのだ。



だが当然。それを面白く思わない人間だっている。



「分かったら早く下がれ。こう見えても忙しいんだ。」


「は、はい!。」


この男もそんな人間の1人だった。



「はぁ…。いつから魔術は有象無象に浸透するような下等な物に落ちぶれたんだ?。選ばれた血筋と優れた者達に注げるものは全て注ぐべきなのだ…。」


目の前に並べられた書類を見る。


各方面に従軍する魔術師達の負傷や死亡報告。


新卒の従軍魔術師達の人数や、その中でも特に優れた人材の配備先とその承認申請。


新たな魔道具の開発費の相談に実用的な新規・編纂術式の報告…。



魔術師としての知識が必要な物…、そんなものは要らないただの責任者としての判断を仰ぐもの…、それすら必要の無いハンコを押すだけの書類と報告書…



「全く。私である必要は無いものばかりだ…。だが、それでも私はこの可否を決めることが出来る…。この国の魔術は私が担っているのだ…。」


そう考えると優越感が湧き上がってくる。


魔術師としての頂点である賢者の称号。魔術師として立てる権力の頂点である国家魔術統制局の局長…。



彼は自分の存在の大きさに酔いしれていた。目指していた場所に立てている事に幸福感を抱いている。



(そうだ、この国の魔術は貴様の存在の下に在る。喜べ…小さき存在よ。)


ケイオスの頭の中で声が響く。獣の様な…低く、恐怖を抱くような声が。



「うるさい…。そんなことは私がよく分かっている…。」


(あぁ!そうだなぁ!。己が如何に『小さき』存在かなど…貴様がよく分かっているはずだ。)



この声の主はケイオスを誰よりも…知っている。


そしてケイオスこの存在に抗えない。これはケイオスが幼い頃から一切変化していない。



(選ばれた血筋と優れた人材に…か。全く…お前はいつも面白いことを言うな。それで?、お前は一体『どっち』なのだ?。)


痛い所を突いてくる。いつもこうだ。



「私は『優れた人材』だ。……当然だろ。」


(ふん。あぁ、当然だとも。そんなことは『我』が1番理解している…。)



からからと笑う声が…いきなり冷めた声になる。


面白くない答えだと言うことだろう。



「ふん…。悪いが私は先に夕食を済ませる。時間の無駄としか言えない話はまた今度にしてくれ。」



……返事はない。からかい飽きたと言う所か…。



声に開放されたケイオスは大量の資料と自分の机、来客用のソファが置かれた局長室を出る。




「…今日も魚料理が食べたいな…。どこで食事を取ろうか。」


王都の中心である城区近辺。飲食店の数は少ないが…どれも富裕層のみを意識した店だけあって美味い料理を出してくれる。


川の傍に文明あり…当然ラナトリスの近くにも大きな川が流れているのでここでは川魚の料理がとても美味い。



ドンッ…夕食の事を考えながら歩いていると廊下の角から出てきた男とぶつかってしまった。



「あぁ、申し訳ありません…。お怪我はないですか?。」



少し汚れてはいるが燕尾服にハットを被った男だ。あまり着ているものは見掛けないが身なりのいい方…それもここ(統制局)に出入りしているとゆう事は蔑ろに出来る人では無いだろう。



「いえ、こちらこそ失礼。所でどのような要件でいらっしゃったのですか?。」


少なくともここに出入りする者は把握している。知らないとゆう事はご新規様とゆうことだ。



「あぁ、いえ…お気になさらず。少々知り合いに用があったのですがもう済んだので。それでは『また』。」



…………



「出口はあっちですよ。」


出口がある所とは違う所へ進んでいく男。用事が済んだのならもう帰るはずだ。



「……おおっと、これまた失礼。初めての場所はどうしても苦手でして…。」


……………………



「そうですか。では初めての人が迷わないようこれからは案内役をつけるようにしましょう。………。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



王城周辺。中でも比較的飲食店が多い通り。


夕食時なだけあって胃を殴り付けるような…暴力的なまでの美食の匂いが漂う。



「やれやれ。いい料理を出す店なのだろうが…。匂いを垂れ流して客引き等屋台とやってる事が変わらないな。」


そうは言ってもジャックの腹はギュルギュルと既にKO寸前だ。


しかし、誘惑に負けている場合では無い。重要な役割を担った彼は通りの影から影へは泥棒の様にコソコソと、光の当たる場所はさながら貴族のように優雅に…通りを進む。


1人の男を追いかける。



通りには人影がチラホラと見えるが女性のみで歩いている者はいない。一連の殺人が市井に影響を及ぼしている顕著な例だ。



「私の時もこの様に恐れられたのだろうか?…。ほんの少しだが妬いてしまうな。」



ふと、ターゲットが1つの店に入る。


集団による犯行。こういった店内で集まり、今夜の標的を定めているのかも知れない…。



「…ふむ。中に入るか…。」


ジャックも続いて店内に入ろうとして、止まる。


中に入るべきではないと分かってしまったのだ。



店前に書かれた今日のオススメとその値段に…。


「た、高い?!…。この値段では私の所持金では惨敗では無いか!!。」



ジャックは良くも悪くも外面を意識する男であった。



「店に入れば最低でもコースと上から数えた方が早いワインを頼むのが紳士(ジェントルマン)……。くっ…ここは諦めて出てくるのを待つしかないな……。」




それを遠くから眺めるアンナとケンラ。


「あいつ、なんで店の前でウロウロしてるの?中に入れば良いのに。」


アンナはジャックの所持金等知る由もない。


「…きっと何か考えが有るんだよ。任せたんだから信じよう。」




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