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異世界で過ごす休暇の為に  作者: ますかぁっと
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彼の『異世界転移』

「ふむ。…まさか言葉が通じるとは…。ここは本当にイギリスなのか?。」



夜のラナトリス…。酒場やその近辺以外は殆ど人が居ない街並み。


そこを歩く燕尾服にハットを被った男が歩いている。



「建築様式は…古い町並みの様だが、経年劣化が余り見られない…。実に奇怪だ…。」



男は…レンガ造りの壁を撫でる。元々寿命の長い建材では有るが…建材としての寿命とゆうわけでは無く、傷や汚れとゆう観点から比較的新しい建造物だと伺える。



「狭い路地にも苔が少ない…。今は乾季なのか?…それとも雨の少ない気候か?…。やはりここはイギリスなのか?…だがこの規模の都市で建造物の状態がここまで良い所は無いはず…。」



言葉が通じる。しかし母国と呼ぶには差異がある…。その奇妙な感覚が彼を思考の海へと引きずり込む…。



(いや、あの奇怪な現象の後では似ているとゆうだけで比べるのは浅はかか。……んっ?。)



路地を歩く男の耳に誰かの足音が届く。


追われる身として無意識に物陰に隠れる男。


(ほう、…実に美しい女性(レディ)だ。)


月夜でも分かる赤毛…軽装だが鎧に腰には剣とその有様はまるで騎士だ(実際に騎士だが)。



(ちょっどいい。彼女の反応で…ここがイギリスかどうかを確かめるとしよう…。もしそうでなければ記念すべき『1人目』だ!!。)



男の中で嗜虐心が膨らんでいく。目の前の美しい女性をズタズタに引き裂き…その恐怖の顔を拝んでみたい…。


(さてさて、どう登場して見せようか…。)



女性が歩みを止める。すると辺りを警戒し出す…。


「居るのは分かってる!!。出て来なさい!!。」



(おや?…私に気付いたのか?。ふむ、なら仕方がない。)


………………



(普通に出ていくか。)←ただの馬鹿



「ははっ。中々感の鋭い女性(レディ)の様ですね。」



女性の前に姿を現す。貴族の様な…キザで優雅な振る舞いで…。


そして女性の容姿を褒めるのも怠らない。



「んん?、良く見れば赤毛の美しい女性ではないですか。いやはや、今夜は良い月夜ですねぇ。」



そして意識を他の物に向ける…優しく、朗らかに…。



そこから狂気を匂わせる…この笑顔を狂気に染め、僅かでも安心した女性を恐怖で縛る。



(そう、これが私の『登場』パターン!!。)



「所で…その綺麗な赤毛…。羨ましいですねぇ。私もこの渋い黒髪は気に入ってはいますが…やはりその燃えるような赤髪も実に素敵だ…同じ人間なのにどうしてこうも違うのでしょうか?。」



その顔を歪める女性。しかし恐怖に屈したとは呼びがたい。


そう、それでいい。多少の抵抗の意思は殺す側からすればむしろ心地良い。せいぜい楽しめるように頑張ってくれ。



「ああ気になる…実に気になる…。しかし、そのお美しい外見『だけ』では美しことしか分からない…。」



その顔はどんどん歪んでいく。実に愉快だ。

私の言葉でその心と体を震わせる…優越感が顔に出てしまい…笑顔が収まらない。



「大変申し訳ありませんが少々付き合って貰えませんか?。いやはや…私も私自身の女性への探究心には呆れているのですがこればっかりは…」



女性が剣を抜き、殺意を放つ。


抵抗するのか…。剣を抜くとゆう事は少しは腕に自信があるのか?…。



「こればっかりは…『辞められ』無いのです。」


だがそれも良し。その自信を根底からへし折り、屈服させる。


今回は大いに楽しめそうだ。無力化したら…長く遊んでやろう。



「安心してください…すぐに『イカせる』事には定評があるので…。」



(まあ、定評が有るだけでしないがな。)



ナイフを構え、腰を落とし…低く、這うように駆け寄る。



(女性(レディ)とは言え刃物を持つ相手に油断はしない。無力化するまでは一方的に(ワンサイドゲーム)だ。)



女性の驚愕する顔が見える。男の目と女性の目が合う。



(ふふ、さぞ驚くだろう。私の全速力は……皆捉えることすら出来ずに死んでいく。)




引き伸ばされた思考…その中で気づく。




(……あれ?…なんで目が合ってるのだ?…。並の者ならそんな暇も無くやられ…)



ナイフを体につけるように持ち、駆け寄る。リーチは短いが圧倒的スピードとゼロ距離から腕を伸す事で深くナイフを突き刺し、確実に致命傷を負わせる為だ。



…だがそう。リーチは短い。



美しい女性は背も女性にして高めで、短いリーチを超える長さの美しい脚を持っている。



それは刹那の出来事だった。


低く走る男、その更に下から豪速の凶器が男の脇腹を寸分の狂いも無く『撃ち抜く』。



「ふんぅ、ごっっはぁぁあ!!!」


激 痛 が は し る 。



一般成人男性が、自信のあった足の速さを超えるスピードで蹴り飛ばされ路地の壁にぶち当たる。



レンガ造りの道と壁はそのインパクトに耐えきれず、男がぶつかった壁はボロボロとレンガが崩れ落ち、舞い上がった砂埃と共に男を埃まみれにする。


蹴りを繰り出した女性の軸足を支えていたレンガも同じく砕け、わずかだがその足は道に埋没している。



「ビックリしたぁ〜。結構早いから本気出しちゃった…。これって結構グレーだよね…。まあ、大丈夫だと思うし黙っておこう。」



道から埋没した足を引き抜き、そそくさと先を急ぐ女性…。


そんな女性の後ろ姿を薄れていく意識の中…男は思う。



(こ、…ここは…。イギリスでは無いな…。こんな女性(レディ)…居るはずが無い…。)




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ごはぁっ!!。」


前から歩いて来た女性にいきなり腹を蹴られる夢で目が覚める男。



「ゆ、夢か…。まあ、あんなに『優しく』蹴られていなかったからな。」


脇腹が傷む。壁に直撃した背部も同じく痛む。


体を動かす度にパラパラとレンガの欠片が落ちていく。いったいどんな勢いで壁にぶつかったとゆうのだろうか。



「しかし、女性の蹴りで気絶し。朝を迎えるとは…。最悪の目覚めだ。」



体を起こす男。燕尾服やハットを叩けばいくらでも埃が舞うが…ある程度で我慢するしかないだろう。



「全く…せっかくの服が台無しだ…。汚れないように着ていたのに…。」



とは言え襲ったのは自分からなのでもはや何も言えない。



「はぁ…取り敢えず朝食を取るとするか…。」







「あぁ…やはり…。ポンドが使えないようだな…。」


飲食物を求めて彷徨い、市場らしき場所を見つけた男。しかし、そこで行き交うのは紙幣では無く貨幣だった。



「今時貨幣か…。英語も通じるし、建造物の状態からして『昔』のイギリスへ来たのかと思ったが……。」


そう言って男が目を向けた先…そこには首輪を付けられたみすぼらしい服を着ている『獣』の耳や尾を持つ人間が居た。



「獣人とでも言えばいいか。見た所奴隷の類だな。如何にも魔術を扱う様な格好をした者達もよく見掛ける。まるで本の中の世界のようだ。」



昼間になり、街を往く人や商売を見てこの街・この世界の事が少しづつ分かっていく。


しかし、それで腹が膨れる事は当然なく…



「あぁ、…空腹が収まらない…。みっともなく腹を鳴らすのは紳士的では無い。勿論盗みもだ…。あぁ、どうしたものか……。」

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